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(木暮と春菜)


笑う男と泣く女は信用するなと何処かの誰かさんかが言っていたけれど、ならばどんな男とどんな女を信用しろと言うんだ。
そもそも、男だとか女だとか関係なしに人間なんてものは信用ならない。

なんて事を頭の中でぐるぐると考えながら木暮は目の前で泣いている春菜に掛ける言葉を探している。

探して、探して探して探して、漸く木暮は口を開いた。


「お前の泣き顔、不細工だな」

「…え?」


木暮の言葉に春菜は目を真ん丸にして驚いた。
が、直ぐに驚きを怒りに変え、そして笑いに変えた。


「もう、木暮くんったら失礼しちゃう!」


怒っているかのように頬を膨らませるも目は何処と無く笑っていた。
膨らんだ頬の隣に並ぶ口も弧の字を描いている。


「でも、」


それって木暮くんなりの励ましなんだよね、有り難うと春菜は続けた。


「べ、別に、そんなんじゃないよ!思った事を言っただけ!」


そう言ってぷいっとそっぽを向くとはいはい、わかってる。わかってるわよと笑いながら言う春菜の声が木暮の耳にそっと、届いた。

笑っていたって、泣いていたって怒っていたって変わらない春菜の言葉と声に笑う男だとか泣く女だとか人間だとかそんなの関係なしに、春菜なら信用してやってもいいかなと、木暮はなんとなくそう思った。


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