2018/04/14 17:50
錯綜する想い

錯綜する想い

180414


「どうしたんだ?急に切ったりして。電話の相手はニアだったんだろ?」
「向こうが切ったんだ。喘息の発作さ。全くあいつは、子供の時から何も変わらない」

メロは一度だって病に伏したニアが心配だ、と口にしたことはなかった

「ロジャーが言ってたけど、最近ひどいらしいぜ」
「知っているさ。偏屈に拍車がかかって喘息の薬も嫌がるから、余計に悪化して食べた物を殆ど吐き出した挙句に食道炎を併発したってな。そして喘息が更に悪化する悪循環だ。あの爺さん、それをわざわざ電話で俺に報告してよこすんだぜ」

「おまえが特効薬だって分かってるからだ。助け船を出してやれよ」
「フン」

鼻を鳴らしてそっぽを向いたメロに、マットは気乗りしない低音で煙草をくわえた

「何よりニアは、おまえの傍に俺がいることが気に入らないんだよ。あの毒舌で直接妬みを食らったことはないが、あいつの嫉妬は昔から感じてるし、俺もあいつにはいつも嫉妬してる」

「そんないがみ合いはよせと言っているだろう。子供か!?お前たちは!」

イライラとした様子で聞いていたメロは目をむいて叫んだ

「……。なぁメロ。行きたいんだろ?」
「あ!?」

メロの威嚇に、マットは溜め息雑じりの煙を吐いた

「行って安心させてやれよ。ニアは昔からおまえ以外に心を開かない。昔はいつもおまえが傍に居たから、施設病は悪化しなかったんだ。それに…おまえのそのイライラは、煮え切らない自分に対する感情だろ?おまえは気持ちを隠すのが下手なんだ、心配していないフリはやめろ」

「偉そうに、俺に指図をするな!」
「指図してる訳じゃない。俺がおまえを行かせたいと思うか?」

淡々と受け答えるマットに、メロは携帯電話を握りしめたまま押し黙った

外界への関心が薄いゆえにずっと使われることなく暇を持て余していたマットの中の卓越した能力の全ては、選ばれたメロというたった一人の対象を扱う時にだけ、忠実で素晴らしい働きをした

マットは幼い頃からメロをつぶさに観察していたから、彼の感情の流動や抵抗心理に伴う発作的な言動について熟知していた

そして大抵の場合、その読みは的を得ていた







小説「錯綜する想い」
マットとメロ

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