自由倉庫
Freiheit


::○○しないと出られない部屋(断章の羽根)

【相手に歯形を10個付けるまで出られない部屋に閉じ込められました】


「じゃあ、私を噛んでもらっていいですか」
「……いいのか」
「兵長の身体を噛むわけにはいかないので」

 私はジャケットを脱いで、シャツを肘まで捲り上げる。

「両腕に各五ヶ所、合計十ヶ所。――これで出られるはずなので、お願いします」
「わかった。……行くぞ」
「はい」

 早速がぶりと歯を立てられた。痛いけれど我慢できないほどじゃない。ちゃんと加減をしてくれている。

 すぐに右腕、左腕へひとつずつ歯形がついた。まだ肌が空いている場所に噛まれるのを待っていると、兵長が顔を離した。

「どうされました?」
「……別の場所がいい」

 言葉の意味を理解するのに数秒かかった。

「え、えええ?」

 私が戸惑っても兵長の態度は変わらない。

「あの、そんな、ここから出ることを先決としている以上、噛む場所を選り好みしている場合では……」
「だめなのか」
「ええと、その……どこがいいんですか」
「首筋」
「く、首はだめです。ここから出られた時に周りに隠せません」
「太もも」
「ふ、ともも……!?」

 どうしよう、ここから出られるのかものすごく不安になってきた。

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一回やってみたかったんですよね、ということで『○○しないと出られない部屋』のお話でした。ありがとうございます診断メーカーさま。
さあ残り八ヶ所、どこに兵長の歯形をつけてもらいましょうか!
 

2017.06.18 (Sun) 23:18
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