自由倉庫 Freiheit ::湖畔の乙女(断章の羽根) ※夢主はデフォ名です。 「それ行けー!」 釣り竿を振り、湖の中央へ投げた。少ししてから反応を感じ取って一気に引き上げる。 「大漁大漁!」 そこまで大きさはないけれど、立派な魚たちだ。釣り上げた三匹の魚を嬉々としてバケツに入れていたら、背中に声をぶつけられた。 「ちょっとリーベさん! せっかく私が可愛い水着選んだのに泳がないんですか?」 悲しげな表情で怒るニファさんに申し訳なくなる。 「わ、私は夕食の調達を……」 「せめて着替えて! 私が見たいから!」 「でも、ついさっき絶好の入れ食いポイント見つけたので……!」 一緒に湖へ来た調査兵の人数と釣り上げた魚の数を計算していると、 「あんまり肌を露出したくないからって希望を聞いた上で選んだのに! ひどいです!」 「え、そんな! あの、ごめんなさい……!」 さっきまではゲルガーさんも一緒に食料調達を手伝ってくれていたけれど全然釣れなかったから今はふて寝していた。私が頑張るしかない。 大きめの石をひっくり返して、そこに群がっていた虫を釣り針へしっかり引っ掛けてからまた竿の先をを湖へ沈める。 「おいしいご飯作りますから! ね!」 必死に説得しても膨れっ面をされてしまった。そうしている間にまた一匹釣れたのでバケツへ入れると、 「リーベさん」 ニファさんに腕をつかまれた。ぎゅっと抱きしめるように。 「あ、一緒に釣りします?」 完全に油断したタイミングで、 「ごめんなさい!」 「きゃっ!?」 見事に投げ飛ばされた。湖へ。 怖い。ニファさんの執念が怖い。 ずぶ濡れになった私は着替えざるを得なかった。そう、水着に。日帰りだから予備の服とか持ってなかったから仕方ない。帰りは何を着よう。服は近くの木へ干しているけど下着はさすがに同じようには出来なかったからもう水着の上に乾くであろう服を着るしかない。水着なのに濡れることは出来なくなったけれど仕方ない。 「見立て通り! 物凄くお似合いです!」 「……ありがとうございます」 【中略】 「お前、それ――」 「ニファさんが選んで下さって」 「……その格好、誰かに見せたか」 「はい。ニファさんに」 パーカーとシャツをばさっと投げられた。落ちる前に慌てて受け止める。 「シャツ着てパーカーは腰に巻け」 「え?」 「さっさとしろ」 「は、はい」 言われた通りにしてみた。 断言出来る。すごく、変。シャツはともかくパーカーは腰に巻くものじゃない。 「あの、これ、おかしくありません……? 一応、せっかく水着なのに、隠しているのは……」 さり気なく不服を申し立てると睨まれた。 「そんなに着たいなら俺の部屋で着ろ」 「え、あの、水着を部屋の中で着るのはおかしくないですか?」 「別にそんなことねえだろ」 そんなことあると思う。 ----- 結構前から書いていた水着ネタ。 ニファさんと兵長の迷走感を活かした全体の流れとラストが浮かばないので諦めました。 冒頭の釣りシーンは個人的にお気に入りなのでどこかで活かしたい。そう、彼女は釣りスキルも高かったのです…! back ×
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