自由倉庫 Freiheit ::新兵一年目編Q 「うめえええええ!」 私は新しい料理の皿を置きながら、食事にがっつくゲルガーさんを眺める。 ここ数ヶ月ですっかり習慣となった夜食作りに励んでいたら突然この人がやって来たのだ。そして前置きなく食べ始めた。そのうち大きく目を見開いたかと思うと上記のような言葉を時々叫んでいる現状だ。 「…………」 尊敬出来る部分ばかりではなくても巨人を前にしたゲルガーさんは立派な兵士だったし、助けてもらったんだし、ちゃんとお礼と謝罪はすべきだろう。 悩みながらそう考えて、口を開く。 「あの、その……私……」 「謝るな馬鹿」 食べ終えたお皿を重ね、ぐいっとお酒を流し込んでからゲルガーさんが言った。 「俺だって右も左もわかってねえ新兵のガキの手綱も握れなかったんだ。お前みたいなぺーぺーが分隊長の班に配属されるのが気に食わねえからって、あんま誉められたことじゃねえのはわかってる。だから、まあ、お互い様ってヤツでいいんじゃねーの」 その時、ゲルガーさんが私を見てくれて気づく。 今、やっとこの人と向き合えたように思えた。 そのことに感動していると、 「楽しそうなことやってるね」 「俺もいいか」 ナナバさんとトーマさんがやって来た。私は即座に応じる。 「もちろん! すぐに用意しますので……!」 慌てて料理を分けていると、ゲルガーさんに腕を引っ張られて座らされた。 「つーかお前も座って飲めよ、ほら」 「あ、私はお酒飲めなくて」 ――私、この班でやっていけるかもしれない。 これからは大丈夫な気がする。 調査兵団へ入団してもうすぐ三ヶ月。やっと心にゆとりが持てたような気がした。 翌日。 欠伸を噛み殺しながら洗濯物を干す。まだ医療班からの訓練禁止令は解けなくてもどかしい気持ちはあるけれど、今日は天気がいいし風も穏やか。綺麗になった布の山に触れているのは心地いい。 助骨に気遣ってゆっくり呼吸をしてその感覚を噛み締めていると――背後で足音がした。 ----- さて、後ろにいるのは誰でしょうか! 残り二話! back ×
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