自由倉庫 Freiheit ::今日はわたしが誕生日の続き(王子様シリーズ) ※夢主はデフォ名です。 「ちょっとおおおおお!? 何で勝手に負けてるのライナー! わたしの至福タイムが終わっちゃうじゃない! もっとベルトルトを見ていたいのにいいいいい!」 思わずライナーに飛びかかって首を締めれば、ぐいっと後ろから襟首をつかまれた。振り返るとユミルだ。 「イリス、お前今日食事当番だろ。誕生日だか何だか知らねえけどちゃっちゃと行けよ。私とクリスタの食いもんがないとか許されるとでも思ってんのか?」 「ちょっとユミル、そんな言い方は――」 クリスタが諌めようとしてくれたけれど正論だ。時間を確認すれば作業開始時間を過ぎていた。誕生日に当番だなんてツイてないけれど仕方ない。 名残惜しくもベルトルトのいる空間を離れて厨房に駆け込めば、すでにミーナやアニがせっせと野菜の皮をむいたり食器の用意をしていた。 「ごめん、遅くなった!」 謝りながら手を洗おうとするとミーナから指令が飛ぶ。 「イリス、悪いけど水汲んできてくれる? 思ってたより使っちゃって」 「了解っ」 よりによって力仕事だけれど、それをいちいち不平に思う方が損だと訓練兵になって学んだから気にしない。さっさと井戸へ向かう。そこには誰かがいた。 誰だろうと思うより先にわかった。ベルトルトだ。 ときめく胸が幸せで満たされてながら駆け寄る。 「ベルトルト? どうしたの?」 ベルトルトはわたしを一瞥して、 「部屋の飲み水がなくなったから」 わざわざ取りに来たらしい。わたしがここに来たのは偶然だしちょっとした運命を感じる。 でも、せっかく出来た二人きりの時間を堪能したくても厨房へ戻らなきゃ。 ベルトルトのことだけ考えてベルトルト第一に生きたいけれど、訓練兵団という集団生活を蔑ろにしては生きていけない。 とりあえず今は目の前にベルトルトがいるからわたしはとびきりの笑顔で、 「待っててね、腕によりをかけておいしい夕食作るから!」 「イリス」 バケツを手に駆け出すなり呼び止められて、振り返ると逆光だった。 「僕にこんなこと言う資格、ないだろうけど」 ベルトルトは今、どんな顔をしているんだろう。 「誕生日、おめでとう」 それだけ口にして、ベルトルトは戻って行った。 「…………」 ああ、どうしよう。 嬉しくて。 嬉しくて。 嬉しくて。 わたしはもう何もいらないよ。 あなたがいれば、それだけでいい。 back ×
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