自由倉庫 Freiheit ::発明王による対人立体機動装置に関する所感 「――というのが対人立体機動装置の大まかな情報なんだけど」 「ふーん」 「アンヘルはどう思う?」 「装置に関する問題点はお前が指摘した通りじゃないか? 特にアンカーを出している間に攻撃も装填も出来ないのは致命的。射出機の位置は腰のままで良かったと思うな」 「照準を合わせるのが手元の銃口と腰の射出口でばらばらになるのを避けたんだと思う。慣れたら違っても問題ないと思うんだけど。だって対人制圧部隊の兵士たちも元々は訓練兵団で通常の立体機動装置を使ってたんだし」 「あー、それは作り手と使い手の考え方の相違かもな。銃口と射出口の向きを統合したヤツの気持ちが俺はわからなくもない。元からある立体機動装置を土台にしつつ、新しく自分の手を加えたいって製作者の考えも見え隠れしてるのがわかるし。それでも悪い点ばかりじゃないぞ。まず火力がすごいよな。射撃の腕が悪かろうと命中率を散弾と威力で底上げしてる。お前も言ってたみたいに有効射程距離は短いが、ゼノフォンが見たらこの辺りいじり回しそうだ」 「…………」 「何だよ」 「アンヘルは悲しくないの? 怒らないの? 悔しくないの?」 「何で?」 「だって、せっかく発明した巨人に対抗する武器を対人間用に作り替えられたんだよ?」 「用途に思うところがないわけじゃない。でも新しいものを作るのも、元々あったものを改造するのも、職人の性だと俺は思うんだ。俺は俺で好き勝手して立体機動装置を発明したし、未来は未来で好き勝手すればいい」 「…………」 「……お前が言ったような感情が全くないわけじゃないけど――」 「けど?」 「お前が悲しんで、怒って、悔しがってるから、俺はもう充分なんだ」 そこで私は目を覚ました。 「…………」 夢だったらしい。 眠りが浅いとおかしな夢を見るなと思いながら身体を起こした。 ----- 謎空間の対話ですが、夢の中なら問題なし。 back ×
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