自由倉庫 Freiheit ::未来はわからない-another ending-(ウォール・シーナの魔女) (中略) 女は「あ」と何かに気づいたように声を上げた。 「何だ」 「私、わかったかもしれないわ」 「は?」 「言ったわよね、『自分の未来はわからない』って」 「ああ、そうだったな」 「それはつまり、私が師団長さんのお嫁さんになるかもしれないからじゃないかしら。だから結婚する師団長さんの未来が視えなかったのよ」 「……はあっ!?」 絶句していると、女は顔を上げて綺麗に笑って言った。 「師団長さん、私と結婚しましょう」 長く時間が止まったような気がした。女の言葉を理解するまでずいぶんとかかって――声を上げた。 「ま、待て……! 待て待て待て待て!」 「何よ。もしかして私は断られるのかしら」 「そうじゃねえ!」 必死になって自分自身を落ち着かせた。 「俺から、言う。お前が先に言ったのは、ナシだ。わかったな?」 深呼吸してから、俺は背筋を伸ばす。 俺は男だ。兵士だ。さあ、腹を決めろ。 「いいか、よく聞け」 「ええ、聞くわ」 「これからはお前の綺麗な瞳と、同じものを見ていたい」 「同じもの?」 「ああ」 俺ははっきり言ってやった。 「お前は自分の未来は見えないんだろ? だったらあやふやな未来を歩いて一緒に見に行こうじゃねえか」 「――まあ、悪くないプロポーズね」 女がそっと寄り添って俺の手を握る。 人間らしい、あたたかく柔らかな手だった。 ----- メモ整理していたら発掘されたので。書いたのは2014年1月とのこと。終盤のみだからこれから話を繋げるつもりだったのでしょう。 というわけでまさかの逆プロポーズでした! 結果的には本編ラストの師団長の台詞が気に入ったのでこっちはやめましたが。 それにしても完結後に13巻読んだ時は本気でびっくりしました。色んな意味で本当に思い出深い作品です。 back ×
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