自由倉庫 Freiheit ::新兵一年目編O 「どりゃあああああああっ!」 真横から物凄い衝撃が来た。ゲルガーさんに蹴り飛ばされたのだ。 「ぐっ!?」 私の身体は吹っ飛ばされて木に激突する。落下しながら薄れる意識を叱咤してワイヤーを射出し、大地との衝突をどうにか回避した。 倒れるように地面へ着いて、よろよろ身体を起こせば呻きが漏れる。息が出来ない。違う。少しは出来る。でも痛い。 「あ……」 助骨が折れたことを悟る。訓練兵時代に一度やってしまったから知っている感覚だった。息が浅くしか出来ない。苦しい。 ゲルガーさんに蹴り飛ばされたからにせよ、木に激突したからにせよ、死ぬよりはこのほうがずっとマシだけれど。 でも、玉突き方式で私が助かったなら、ゲルガーさんは? まさか―― 「うおらああああああああ!」 元気だった。 ほっとしたけれど轟く地響きにそれどころではなくなる。巨人が全速力でこちらへ向かってきた。5メートル級だ。こんなに巨人がどんどんお目見えするということは、索敵はもう機能していないらしい。 こうなれば痛みや息苦しさどころではない。歯を食いしばって立体機動で浮上しようとすれば、バランスを取れなくて身体が傾いだ。飛び遅れる。 まずい。このままだとすぐ巨人に追いつかれる。一瞬の判断で、視界の端に見つけたぽっかり空いた木の虚に転がり込んだ。私の身体なら入ると信じて間一髪――後を追うように巨人が顔から物凄い勢いで突っ込んで来た! 「ひっ」 思わず悲鳴が漏れた。ギリギリだった。 さらに巨人の顔は大すぎて虚の奥まで入らなかったから奇跡としか言えない。 でも、奇跡はいつまでも続かない。 巨人が歯を慣らしながら木を削るように顔を入れて少しずつ近づいて来る。 「く、来るな……!」 私は身体を奥へ押し付けて必死に巨人から距離を取る。広い空間ではないから無駄だけどそうする以外になかった。ブレードを振り回す広さもないし、そもそも巨人にそんな攻撃は無意味だし。 どうしようもない。どうしよう。 死ぬの? ここで? 嫌だ。死にたくない。 だって、私はまだ―― 目の前が暗くなりかけた瞬間、唐突に巨人が動きを止めて、がくっと力尽きた。うなじを斬った誰かが討伐してくれたのだろう。 茫然としていれば、蒸発しつつある巨人を転がしてくれたのか入口から光が入ってくる。 「無事?」 ナナバさんだった。 「は、い」 掠れながらも返事をして、這うように木の虚から出た。 すぐに負傷を見抜かれ、抱えられて医療班へ運ばれながら、 「あの……」 「ん? 何?」 「ごめんなさい、勝手な行動したこと」 「謝るくらいなら最初からやらなきゃいいのに」 「……はい」 「ま、こっちに問題が何もないわけじゃないってわかってるから。生きてるんだし、これからの話は壁の中でしよう」 ----- もっともっと書き込みたかったですが倉庫連載に相応しくない長さになりそうだったのでこれくらいに。 とりあえずナナバさんは男性であろうと女性であろうとイケメン。 back ×
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