自由倉庫 Freiheit ::新兵一年目編N 骨を噛み砕く音がして、巨人の手に捕まった兵士の身体が千切れた。あっさりと。 巨人は空腹を満たすために人を食べないから、やがて『それ』は外へ吐き出される。 「…………」 あまりに無情、これが壁の外の現実だ。 現在、二度目の壁外調査中だった。巨人から逃げるにしても無闇に走ることはなく、前回より落ち着いて周囲を認識出来る。冷静さを保っていられる。 ただし、班の空気は良くない。良くないどころか。非常に悪い。連携も意思疎通もあったもんじゃない。疎外感甚だしい。命を懸けた壁外がこんな状態でいいのだろうか。良くないと思う。 まだ訓練兵団で同じ班だった仲間との方がうまく討伐出来るだろうと思い出していると、1体の巨人がこちらへ駆けてきた。 「索敵漏れだ! ミケ班に任せた!」 「了解! チビ以外の全員で叩く! 俺が囮で行くぞ!」 ゲルガーさんの掛け声にナナバさんとトーマさんが続く。 その様子に私は目を眇め、深呼吸して意識を集中させる。 「…………」 私は何もしないために調査兵団へ入ったんじゃない。 歯を食いしばり、馬の鞍を蹴って飛翔した。立体機動装置の出番だ。 ガスを吹かし、レバーを操って巨人の背中へ回り込む。アンカーを刺して高速でワイヤーを巻き取り距離を詰める。 「ここだ!」 両手で剣を振るった。うなじを一気に削ぎ落とす。 が、敵は倒れなかった。 「馬鹿! 浅いんだよ!」 「言われなくてもわかってます!」 「んだとチビ! つーか俺の言うこと聞けよ! お前は待機だっ、何もするな!」 久しぶりに言葉を交わすゲルガーさんへ言い返すうちに巨人がこちらを見た。ぎょろっと大きな目に自分が映ったかと思った次の瞬間、太い右手が振り下ろされる。後方宙返りの要領でそれを躱して距離を取る。 そして逆さまになった視界の前に巨大な口があった。 後方から新たな巨人が迫っていたことに気づかなかったのだ。 「あ」 ここで私は死ぬらしい。 ----- 舞台は再び壁外へ! 新兵一年目編ついに終盤戦突入! back ×
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