自由倉庫 Freiheit ::新兵一年目編M 班の訓練時間になって、私はミケ分隊長へ頭を下げた。 「昨日は無断で訓練を休んですみませんでした」 「そういう時はせめて誰かに伝言しろ。……体調が悪かったのか」 「はい。もう平気です」 嘘も方便だ。 そのタイミングでナナバさんが来た。この人は私が叩かれた現場にいたけれど、特に何も言わないのでほっとした。 そのうちトーマさんとゲルガーさんがやって来る。 私は覚悟を決めて、ゲルガーさんに近づく。 「あ、あの……先日は、すみませんでした」 「…………」 「身体が反射的に動いてしまって……」 「…………」 「……顎、大丈夫、ですか?」 「…………」 徹底的に無視された。聞こえていないみたいに立体機動装置の動作確認をしている。 「…………」 だんまりとは子供かと呆れてしまう。まだ十五の私でもそう思う。 「……はあ」 ゲルガーさんに背を向けて、今日の訓練コースのスタート位置へ向かう。 もういいや。 あまりこの人とは関わらないことにしよう。 それから、次の壁外調査が終わって落ち着いたら、エルヴィン団長に面会を申請しよう。 私みたいな新兵が分隊長クラスにいるのは、分不相応すぎるから。 「……よし」 そう決めて、アンカーを射出して木の上へ一気に上昇する。 今朝のように飛べたのに、心は晴れなかった。 ----- 次回より、再び壁外調査! 残り六話で来年には完結します! back ×
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