自由倉庫
Freiheit


::新兵一年目編L

 昨日は訓練をサボってしまったので、少し身体を動かそうと向かった早朝の訓練場には誰もいなかった。当然だろう。それに人気のない方が気楽なので助かる。

 暗くなりそうな気持ちを振り払い、私は準備運動をしてから立体機動装置を身につけた。

「――よし」

 小さく気合いを入れてから森に入る。レバーを操作してガスを吹かし、慣性を利用しながら木々を抜ける。

「あれ?」

 このコース、苦手な動きばかりで毎回つらかったのに。

 なぜだろう、身体が無理なく自在に動く。

 苦手だった左向きの急旋回も、あんまり好きじゃなかった垂直に上昇する体勢も難なく出来る。

「身体が軽い……!」

 その時、巨人の『はりぼて』が出現した。全身は板、うなじ部分は柔らかい素材で出来たものだ。訓練兵時代からお馴染みの、練習用巨人。

「はっ!」

 ブレードを構え、その巨人を高速でなぎ倒す。うなじを深く切り裂いた。

「やった……!」

 何度だってやったことはあるし、成功したこともある。でもここまでスムーズに動けたことは始めてだった。

 無駄じゃなかった!
 調査兵団に入ってからの毎日に、ちゃんと意味はあったんだ!

「あ、ありがとうございま――」

 巨人の『はりぼて』は人力だ。誰かがロープを引っ張らなければ出現しない。
 だから、誰かが操作をしてくれたと思って周りを見たのに、

「…………あれ?」

 そこには誰もいなかった。

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ちょっと久しぶりに新兵一年目編。
 

2015.11.29 (Sun) 10:25
新兵一年目編(長編設定)|comment(0)

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