自由倉庫 Freiheit ::新兵一年目編L 昨日は訓練をサボってしまったので、少し身体を動かそうと向かった早朝の訓練場には誰もいなかった。当然だろう。それに人気のない方が気楽なので助かる。 暗くなりそうな気持ちを振り払い、私は準備運動をしてから立体機動装置を身につけた。 「――よし」 小さく気合いを入れてから森に入る。レバーを操作してガスを吹かし、慣性を利用しながら木々を抜ける。 「あれ?」 このコース、苦手な動きばかりで毎回つらかったのに。 なぜだろう、身体が無理なく自在に動く。 苦手だった左向きの急旋回も、あんまり好きじゃなかった垂直に上昇する体勢も難なく出来る。 「身体が軽い……!」 その時、巨人の『はりぼて』が出現した。全身は板、うなじ部分は柔らかい素材で出来たものだ。訓練兵時代からお馴染みの、練習用巨人。 「はっ!」 ブレードを構え、その巨人を高速でなぎ倒す。うなじを深く切り裂いた。 「やった……!」 何度だってやったことはあるし、成功したこともある。でもここまでスムーズに動けたことは始めてだった。 無駄じゃなかった! 調査兵団に入ってからの毎日に、ちゃんと意味はあったんだ! 「あ、ありがとうございま――」 巨人の『はりぼて』は人力だ。誰かがロープを引っ張らなければ出現しない。 だから、誰かが操作をしてくれたと思って周りを見たのに、 「…………あれ?」 そこには誰もいなかった。 ----- ちょっと久しぶりに新兵一年目編。 back ×
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