自由倉庫 Freiheit ::新兵一年目編H 壁外調査から二日後。 「いつもはミケや経験を積んだ兵士がやっていることで新兵にやらせる仕事じゃないんだけど……」 ナナバさんが呟きながら私を連れて来たのは面会室。 今回の壁外調査で亡くなった兵士の遺族が来ているらしい。 私に与えられた仕事はなく、ただ数合わせのために連れ出されたので大人しく立っていると、 「どうして! どうしてよ! どうしてあの人が死ななくてはならなかったの!」 若い女性が髪を振り乱しながら叫んだ。母親らしき中年の女性がその人を宥めていたが効果はない。 話を聞いていると亡くなった兵士の婚約者だという。 私が黙って立ち尽くしていると、泣き叫んでいた女性にぎろりと睨まれた。 突然のこと戸惑って、私は見つめ返すことしか出来ない。 「こんな子供みたいな子が生き残っているのに……! どう考えてもおかしいじゃない!」 女性が目の前に来たかと思うと鋭く手を振り上げたので、私は慌てて後退しようとしたが、 「あんたが死ねば良かったのよ!」 その言葉に身体が動かなくなった。 次の瞬間、 「!」 ぱん、と頬を強く叩かれていた。 ----- 次回、前半戦完結。 back ×
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