自由倉庫 Freiheit ::新兵一年目編D 「まだ遅い! グズグズするんじゃねえ!」 立体機動で必死になって追いかければ、リーゼントという髪型をしているゲルガーさんに怒鳴られた。現在、班の訓練中である。ミケ分隊長は幹部会議らしく不在だ。 「すみま、せ――」 「来週の壁外調査で死ぬぞお前! 頭で考えるな! 身体を動かせ!」 訓練兵団で私の立体機動成績は二十一番だった。まずまずだと自分では思っていたのだが、調査兵団志望の兵士としては悪い成績らしい。 それならばなぜ私が分隊長の班に配属されたのか、謎は尽きない。 立体機動は嫌いじゃない。宙を舞うことは心地いい。いや、これは巨人を討伐する手段であって楽しむものではないとわかっているけれど。 何が言いたいのかといえば、立体機動は嫌いじゃないけれど限度があるということだ。もう半日以上休む間もなく装置で動き続けて私は吐きそうになっている。 「う……」 久しぶりに地上へ下りてからは足から力が抜けてうずくまってしまった。荒い呼吸を整えていると、 「全然動きがなっちゃいねえよ。訓練兵団で何をやってたんだお前、そんなんでよく調査兵になったな?」 ゲルガーさんの辛辣な声がした。 「それは……」 私が口ごもれば、 「次はこっちのコース」 相変わらず性別不明なナナバさんの声がしたので私はよろよろと起き上がり、指定されたコースへ向かう。つらい。休む間がない。 「仕掛け満載、不意打ちが多いからそのつもりで。時間計測するよ。カウントしたら出発して」 「は、はい」 「3、2、1、スタート」 私はアンカーを出すと同時にガスを吹かして上昇した。 調査兵団。 敵は巨人。 過去の私に会えるならこう言いたい。 もう少し立体機動の訓練に力を入れて頑張った方が良いよと。 ----- 次回、初陣。 壁外調査へレッツゴーです。 back ×
|