自由倉庫 Freiheit ::東方訓練兵団の雪山踏破訓練その後(薔薇) 「よく聞けお前たち! 原因になった俺が言うのも何だが――《山の覇者》はいなくなってしまった! 死んだからだ!」 俺は叫ぶ。 「これは由々しき事態だ! なぜなら! 俺たちの後輩になるヤツらは《山の覇者》の恐怖を知ることなく来年からの雪山踏破訓練に挑むことになる!」 ぐっと強く拳を握りしめた。 「それでいいのか!? あの人喰い熊が訓練兵に与える恐怖と絶望! 諦観と覚悟! それを後世のヤツらに知らしめなくていいのか! ――いや、良くない! たとえもう《山の覇者》がいなくても『出会うかもしれない』恐ろしさを彼らには持ち続けて欲しいと思わないか!?」 問いかければざわざわと反応が返って来るようになった。 「《山の覇者》は不滅だ! よって俺たち東方訓練兵団がヤツを討ち取った事実を俺たちだけのものにしてやろうぜ!」 俺が拳を天井へ突き上げれば、歓声が上がった。 「よく言ったぞ赤毛野郎!」 「覚悟出来る者こそ兵士!」 「賛成だあああああああ!」 上々の反応に俺はにんまりと笑う。 「よしよし、後は教官に箝口令の許可を――あれ? 討ち取った本人は?」 「みんなー、熊鍋出来たよー!」 「えええー!? 食うのっ!?」 ----- メモから発掘。謎に熱い演説もどき。 連載前に書いてはみたものの、全く不要でブラッシュアップすることもなく終わった産物。 back ×
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