自由倉庫 Freiheit ::入れ替わりボツネタ(断章の羽根) ※夢主はデフォ名です。 ミケ分隊長の部屋へ向かっている途中、すぐそばの部屋の扉が開いたかと思うと手が伸ばされて、私の身体は引っ張り込まれた。 突然のことに警戒したものの、すぐにその必要はないと気付く。相手は兵長だったからだ。 「何です? びっくりしたじゃないですか」 「悪い」 そして兵長はぎゅっと私の身体を抱きしめた。 「お前に触れたかっただけだ」 耳元で囁かれて身体が竦む。同時に走った些細な違和感は腰をなぞられて霧散した。 「あ、あの……」 一体どうしたんだろうか。突然すぎる。 なすがままになっていると、そっと顎を持ち上げられた。 何をされるのかわかって、つい顔を背ける。 「私、その、ミケ分隊長の部屋へ用事があるので」 「少しでいい。じっとしてろ」 「う……」 本当にどうしたんだろう。 仕方なく目を閉じて、身を委ねようと思った時、頬へ兵長の手が添えられ――私ははっとした。夢から覚めたように。 「違う」 「リーベ?」 「は、離して」 身じろぎすれば、相手は慌てて押さえつけるように手に力を込めた。私は抗って、反射的に目の前にいる人物の頬を叩いていた。平手打ちだ。 「あなた誰?」 さらに鋭く誰何すれば、相手はいくらか驚いたような顔になる。 「――俺は俺だ」 「兵長はこんな風に私に触れたりしない」 私は断言する。 「あなたは違う。兵長じゃない。誰? 誰なの?」 すると相手は――兵長の顔で笑った。 そう、笑ったのだ。 「すっごーい! よくわかったねリーベ! うーん、うまくリヴァイを演じたつもりだったけどさすがにキスはやりすぎだったかな。ごめんごめん」 この口調。この仕草。まさか―― 「は、ハンジ、分隊長?」 「正解! ちょっとリヴァイと中身が入れ替わったんだ」 「えええええ!」 私が叫べば、 「おいクソメガネ!」 「見つけましたよ分隊長!」 激昂したハンジ分隊長と慌てたモブリットさんが部屋へ雪崩れ込んで来た。いや、つまりこのハンジ分隊長は兵長なのだろう。 そして次の瞬間、モブリットさんが兵長なハンジ分隊長の口へ透明な液体を問答無用で流し込み、ハンジ分隊長な兵長も自分で緑色の液体を飲み干した。 と、次の瞬間、二人は揃って盛大に倒れた。 呆然とする私と、安堵の息をつくモブリットさん。 「……説明して頂けますか?」 私の言葉にモブリットさんが話してくれた。 「理論を飛ばして説明すると、完成した『精神交換薬』を分隊長は故意に、兵長は騙されて飲んだ結果がこれだ。精神が入れ替わった。今同じものを飲んだからすぐに戻るはずだが……」 そして私は唐突に痺れる手のひらを思い出す。 それから手形のついた兵長の顔を見て、 「頬、冷やさなきゃ……!」 何てことをしてしまったんだ私は! 数分後、元通りになった二人は無事に目覚めた。謝り倒すモブリットさんによってハンジ分隊長は連行され、現在私は兵長の頬を冷やしていた。 「リーベ、離せ。自分で冷やす」 「いや、でも、私がやったことですし」 「お前の手が冷えるだろうが」 「兵長の手が冷えます」 「俺はいい」 そっと外されて、私は渋々手を離した。 「……よく俺じゃねえとわかったな」 「わかりますよ」 あなたはいつだって、私を慈しんでくれるから。 ほんの少し強引な時だって、たくさんの想いをその手のひらから伝えてくれるから。 「…………」 だって私は知っているから。 何の想いも込められていない、ただ乱暴に自分の欲望をぶつけるだけの手のひらを。 ハンジ分隊長はふざけ半分だったから、別に、そんな風には感じなかったけれど。 でも、やはり天と地ほどの差がある。 「わかるに決まってるじゃないですか」 ぎゅっと拳を握れば、 「……何をされたんだ」 「え?」 「お前が叩くほど嫌がることは、俺だってしたくはないからな」 「…………」 兵長は少し勘違いしているみたいだけれど、その優しさにどうしようかと思ってしまう。 「兵長は……」 「何だ」 「私にされたくないことはありますか?」 兵長は怪訝な顔をしてから、 「さあ、何だろうな。思いつかねえ。そんなことはないんじゃねえかと思うし、あったとしても出来ることなら許容してやりたい、とは思っている」 ----- 半年前に書いたものを発掘。 結末がない上に全体的に書きかけですね。 もっと良い入れ替わりネタがある気がするので打ち止め。 back ×
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