首輪の紐がほどけてる 破 義理?の兄弟で赤黒 赤司くん(16才)と黒子くん(28才)です ちなみにモブ黒のエロ描写が強いので気を付けてください 兄との仲が悪くなってから今まで出来るだけ避けていたことが嘘かのように、自分は兄の行動をいちいち注視していくようになった。たまに会えば、以前ならば俯いていた顔を、兄の顔を真正面から見つめ、その一挙一動からなぜあんなことをしているのか、わからないかどうかと探すようになった。 気付いたことは、兄はたびたび男とあの部屋でセックスをし、それを屋敷内のメイドや執事は確かに知っていたということだ。知らなかったのは、自分だけだったのだ。 そして、兄が寝るのはあの男だけと思いきや、ベッドで兄の身体をべっとりと白い液体で濡らしているのは他にも数人いた。どれも男で、兄の相手に女はいなかった。 相手に女がいないことが、自分をなぜだか安心させ、それと同時に相手は男しかいないことにどうしようもない憤りを感じた。あの厳格で他人を寄せ付けなさそうな兄が、見知らぬ男の下でいたぶられる兄という一面を見ることによって、視線を惹きつけてやまない水蜜桃のように思えた。 契機が訪れたのは、征十郎が身の内に秘める欲が日に日に増していき、自分でも向き合わざる負えなくなった頃のことだった。 その日もやはり兄は男を連れ込んでいたようで、古い書庫の近くのあの部屋で、ベッドのスプリングを軋ませ、見知らぬ若い男に尻を向け突き立てられる肉棒をぎゅうぎゅうと締め付け、淫らな声をあげてシーツにしがみついていた。 征十郎は、気づかれないようにそっとドアノブを捻り、こっそりとそこを覗き込む。ひっそりと気づかれないようになんてしなくとも、喘ぎ声でその音はかき消されてしまっていただろうが。 ああ、と一際高い嬌声をあげて涙で頬を濡らす兄の顔を一瞥して、征十郎はポケットに忍ばせていたボイスレコーダーのスイッチを入れて、それを部屋の中の音を拾えるように動かした。しばらく兄と男のセックスの模様を録音したあと、征十郎はそのスイッチを切り微笑んで再度ポケットへと忍ばせる。耳に聞こえてくる、しばらくは止みそうにない耳を塞ぎたくなるようでいて惹きつけられる嬌声に、征十郎はちいさく溜息をついた。 そして、立ち上がってボトムの上からそのボイスレコーダーを握りしめ、征十郎はその部屋を後にした。 翌日、おそらくもうこの時間に起きているだろう兄の部屋へとたずねに行った。 兄の御付の執事が、近づいてくる征十郎の姿にとめるようなそぶりを見せたものの、征十郎は制すと執事はあっさり引き下がった。その顔には、やや訝しげな色が見受けられる。 昨日録音したばかりのボイスレコーダーを握りしめて、征十郎はごくりと生唾を飲んだ。 「兄さん」 声が、みっともなく震えたような気がした。 部屋から驚いたように息を飲んだ音が聞こえたような気がしたが、ドアを開けた兄の表情はいつもと変わらず無表情であることに、征十郎は慣れたように動じることはなかった。 兄は征十郎の姿を視界に入れると、不愉快そうに眉をしかめて、それでも征十郎がひるむ様子がないのをみとめると「………なんです?」と渋々ながらといった態で問うてきた。 「これ、兄さんに」 征十郎は握りしめてすこしばかり手のひらの温度でぬるく温かくなったレコーダーを、兄の手のひらの上に落とした。 訝しげな顔をした兄は、にこやかに微笑む征十郎の姿に、すぐさま顔をしかめた。 「意味がわかりませんね。これをいったいどうしろと言うんです」 レコーダーを見下ろして、兄はたいして興味がなさそうにつぶやく。 「いますぐじゃなくていいから、聞いてください」 「………………征十郎くん?」 いつになく強気な物言いで押しつけてくる征十郎に、はじめて兄はレコーダーに興味を示した。 無言で手のひらにあるレコーダーを見つめる兄に、征十郎は一層笑みを深める。 「聞いたら感想を聞かせてくださいね、兄さん」 *** 車のブレーキ音が聞こえて、征十郎はベッドの上から起き上がりカーテンをずらして外を眺めた。 そこには黒塗りの車からいつも通りの表情で降りてきた兄の顔が見えた。 もしかして、まだあのレコーダーを聞いていないのだろうか。つまらないな。 そんなことを思いながら征十郎が外をじっと眺めていると、不意に執事になにかを話しかけていた兄がこちらを見た。 「!」 その兄の視線にはっとして、征十郎はあわててカーテンを閉めた。どくどくと早鐘の鳴る心臓にひやりとして、征十郎は先ほどの兄の隠しきれぬ激情に駆られたような、そんな瞳がそこにはあった。 征十郎は思わず見てはおられずにカーテンを閉めたが、あの様子を見ると兄はどうやらレコーダーを聞いたようだ。 怒るのも無理はない。セックスの最中の会話や音すべてがあのレコーダーにははいっているのだから。 征十郎はあの兄の視線が脳裏に焼き付けられてなかなか頭から振り払えないのを、やや苛立ちを感じながら、すぐに窓から離れた。いい加減に閉められたカーテンを開けてしまいそうになる自分が、征十郎にとっては恐ろしかったのだ。 兄は夕食の後、平坦な声で部屋にあとで来るように、と言ってきた。その鋭利な刃物のような声音に征十郎はいくらか背筋がひやりとし、たらりと冷や汗も伝うのがとめれなかったのだが、いざ兄の部屋の前まで来ると心は不思議と冷静そのものだった。 コンコンと叩いてから「兄さん、征十郎です」と短く告げると中から兄の声がした。 「入りなさい」 部屋にはいると兄は上等なソファに座り、珍しく部屋に酒を持ち込んでワインを呷っていた。ルビィのように赤いワインがゆらりとグラスのなかで波のように揺れて、その赤い液体が兄の口へと運ばれていく。 「さて、呼ばれた理由はあなた自身がよくわかっていると思いますが」 いつもと同じように落ち着いた様子の兄は、グラスを置いて立ち上がった。 わずかに紅潮する頬が照明にあわく照らされ、ちろりとのぞく赤い舌先に征十郎の背筋はぞくぞくとする。 「はい。わかっています」 「…………なぜ、あのようなことを?」 「兄さんが、あんなことをしているのがどうも不思議でしょうがなかったので……それを録音して兄さん自身に聞いてもらおうかと」 悪びれる様子もなく言う征十郎に、兄の眉がぴくりと動き、口元が歪められた。 「悪趣味ですね、征十郎くん」 「兄さんの方が悪趣味だと思いますよ。見る度に、違う男ばかりとセックスしている」 その言葉に、兄は征十郎は睨みつけた。 「…………………」 「ねえ、兄さん。これでも、兄さんのことは尊敬していた……小さい頃、拾ってくれたのは兄さんだし、いまこうやってお金に不自由のない生活をできるのも兄さんのおかげだったから……。…………けど、いまはもう違う。残念だよ、兄さん」 征十郎は立ったままの兄の腕をつかまえて、こちら側に引いてベッドの上に押し倒した。 兄の身体は思ったよりもあっけなくベッドへと投げ出され、ほっそりとした腕は、征十郎がつかまえてシーツに縫い付けている。 「軽蔑するよ、兄さん……こうやって色んな男に押し倒されて、セックスすることが好きなんだろう」 征十郎のすんなりとした指先が兄の頬を撫でる。 「結婚しないのも、男が好きだから?」 征十郎がそう言うと、兄は顔をしかめてそっぽを向いた。 「………………さあ」 この状況でもしらばっくれたように素知らぬ顔をする兄は、横に向けていた顔を動かしてじっと征十郎を見上げる。 その色素の薄い水面のような瞳が、征十郎を探るようにくるりと動いた。 「兄さん………」 おもむろに征十郎は唇を兄の素肌へと寄せる。白くやや青白くも見える兄の素肌に、優しく吸い付いた。赤い斑点のようなしるしが、色づく。 片手で兄を抱き寄せて、もう片方で兄の服を暴いた。 昨夜の情交が色濃く残る赤いしるしがまばらに散っていて、征十郎はそのひとつひとつを眺めて微笑んだ。 「…………僕を抱きますか、君は」 征十郎にされるがまま身を預けていた兄が、口を開いて征十郎をうかがうように、その感情の読み取りにくい瞳で見つめて問うてきた。 兄の白魚のような手がそっと征十郎へ伸びてきて、その手が征十郎の頬を撫でて、ゆっくりと下ろされる。 その日、征十郎は兄を抱いた。 *** 兄との堕落した性生活はあの日からずっと続いている。兄の男との情交の証拠を本人に提示したときから。 自分の腕の中で淫らに喘ぎ、その白く日に焼けていない腕を背中にまわし、尻穴の付近にぴたりと肉棒をすり寄せれば、普段の雰囲気を微塵も感じさせないかのような淫乱さを見せる。その性欲にまみれた兄の姿を、征十郎は確かな支配欲を感じ満たされながらも、同時にどうしようもない喪失感に襲われていた。 セックスをしている最中の兄は、他の男とセックスしていたとき同様に素直に、女のような声をあげて甘えてくる。じらされればごねり、わがままな態度を見せる。 かと思えばこちらもびっくりするほど従順になり、同性相手にここまでしてしまうのかと驚かされることもある。 セックスという一つの肉体的接触方法でも、やはり征十郎は兄のことがわからなかった。 兄はなぜ弟の自分に抱かれ、なにも反論は言わずにただ喘ぎ、セックスを許諾しているのか。 そんな日々を過ごす中、転機が訪れたのは、兄の部屋でいつも通りセックスをして終えたあとのことだった。 最近はもう男を連れ込むこともなく、自分以外には抱かれていない兄はすっかりベッドの上で寝入ってしまっている。元々体力はないのだろう、その細身の華奢な体格を見ればすぐにわかった。 征十郎は横で寝入っている兄の美しい寝顔を見つめて、衣服を身に着けて立ち上がった。ちらりと兄のデスクを見ると、そこにはたくさんの書類とパソコンが立ち上げられたままだった。 その中身を見て兄の仕事のこなす具合はやはり尋常ではない、と思いながら身体を洗おうと浴室へ向かおうとするが、不意に兄のデスクの上にある綺麗な蒔絵の箱が気になった。 洋風な空間であるこの家ではとてもそれが特異なものに思えて、思わず征十郎はその箱の表面に触れた。よく見ると、やや古びていてこれがつい最近購入したものではないのだとわかった。 なにがはいっているのだろう。征十郎は唐突にその箱を開けたい衝動に駆られた。 鍵がかかっていたが、すこし細工をするとその施錠は簡単に外れた。指に馴染む手触りの良い側面を撫でて、それをそっと開く。 「…………………?」 そこにはいくつかの封筒と、数枚の写真がおさめられていた。写真には見たことのない人物が写っている。 一枚を手に取り、写真の右端を見ると、撮影日が記載されていた。いまよりももっと昔、兄すら生まれていない頃の写真だった。 征十郎があらためて人物を見直すと、そこには女子学生がふたり写っていた。 真っ赤な髪の毛をした美しく聡明そうな女子学生が、もう一人の兄によく似たおかっぱの女子学生とカメラに向かって微笑んで写っている。兄によく似た女性はわずかに口元に笑みを浮かべていて、そのあまり微笑んでいない表情がいかにも兄に似ていた。 他にも写真があって、それを一枚一枚のぞいていると、一枚だけまだ小学生くらいの兄と先ほどの女子学生の片方が、微笑んで写っている写真があった。 封を切られた封筒を裏返して、差出人を見るとそこには『赤司』と書かれてあった。自分と同じ姓をした名に、征十郎は驚いて目を丸くしてその封筒を見つめた。 どくんどくんと嫌な音を立てて、心臓は鼓動する。 封筒を持つ手がじんわりと汗ばみ、征十郎はその中身を見ることもできずに硬直したままになってしまう。 これを見るべきなのだろうか。それとも、見ない方がいいのだろうか。なぜ、兄はこんな風に隠すように置いているのだろうか。この写真の女性はいったい、だれなのだろう。 この封筒の差出人の赤司とは、いったい誰のことなのか。 わからないことばかりで征十郎は足元がふらつきそうになった。 もしかして、兄は重大なことを自分に隠しているのではないのだろうか。 兄が自分のことを引き取ったのは自分が兄と異母兄弟と言っていたが―――― 布地のこすれる音に、征十郎はあわてて振り向いた。そこにはまだ寝入ったままの兄が、寝返りをしただけの姿があった。 ひやりと汗が背中を伝って、征十郎は封筒を思わず抜き取って、蒔絵の箱に再度鍵をかけて戻した。 - - - - - - - - - - PIXIVより再録 これで終わらす予定でしたが、続きを書いてもいいみたいなので考え中です。 ちゃーんと赤黒ですよ、これ。モブ黒ばっかりですが。 |