透明少年はそっと微笑む
赤司と黒子と黒子♀で三角関係
黒子と黒子♀は双子設定

テツナと赤司の交際は順調で、誰が見ても立派なカップルだった。将棋や囲碁を得意とする赤司はバスケ以外ではそれらを昼休みにおなじくそれを嗜める緑間と対戦することが多かったが、黒子テツナが彼女になってからというものの、その対戦は頻繁ではなくなった。
昼休みなかばの図書室に行けば、片隅で噂の二人が寄り添うように座っているのが見られた。
仲が良いカップル。
相思相愛。
それがこのふたりのもっぱらの噂であった。
そんな中、バスケ部の1軍レギュラーはちがった。


「あのふたりって付き合ってるんスか?なぁーんか俺にはそう見えないッスけど…」
黄瀬がおひるごはんを食べたらさっさと去ってしまったふたりの姿を思い出しながら不満そうにつぶやくと、隣りで爪の手入れをしていた緑間が口を開いた。
「赤司もテツナもベタベタするタイプではないのだろう。だいたい、赤司が彼女ができたからといって目の前でいちゃつかれたらこちらが困るのだよ」
嫌なものでも想像するかのように顔をしかめた緑間に、黄瀬もおなじことを思ったのか苦笑いをかえす。
「たしかに!ちょっと怖いッスもんね〜。そんな甘々な赤司っちあんまり見たくないっす……」
くわえたストローの中身をすすりながら言う黄瀬は、青峰の横で壁に背を預けながら文庫本を読んでいた黒子が目について、声をかけた。

「黒子っち!黒子っちはテツナっちと赤司っちが付き合ってるってこと前から知ってたんスか?」
興味深そうに聞いてくる黄瀬に、黒子は文庫本から目を離して黄瀬を見上げる。
テツナとよく似た、けれどテツナよりもっと感情を映さない瞳は淡い空色で、透きとおりそうなほど薄い。淡い空色が暗く影を落としたと黄瀬がおもったのは一瞬で、瞬きをするとすぐにそれは勘違いなような気もした。

「うーん。テツナとはそういう話しにあまりなりませんしね。僕も知りませんでしたよ。昨日本人が言うまで」
「そうなんスか〜。やっぱり同い年の、って双子っていってもそういう話題って話しにくいんスかね?」
「同い年だからっていうより……相手が赤司くん、だからですかね…………」
ぽつりとどこか遠い目をした黒子はつぶやいて、ふっと淡い微笑みを浮かべた。
消えそうな笑みだった。

「まあ、テツナが赤司くんと付き合ってるならそれでいいんじゃないですか。僕はふたりが幸せなら歓迎したいですし」
いつもなら見せない口角をあげた笑みを浮かべて、黒子は黄瀬に向かって微笑んだ。黄瀬は「あ。黒子っちも兄だからテツナっちに彼氏ができても喜んであげるんスね〜。お兄さんなんすね〜」とかのんきなことを言ったのだが、黒子はその言葉に内心動揺しながらも、表面だけではいつも通りふるまえた。

( テツナと赤司くんが付き合うことを僕が喜んでいる?本当に? )

昨日、自分は赤司とテツナが付き合うと聞いたとき、なんと思ったか。
純粋に、それこそ黄瀬のいうように「良かったね」だとか「おめでとう」とかそんな良い言葉を思い浮かべただろうか。
――――答えは否だ。
本当に、黄瀬の言うとおりにおめでとうだなんて言える兄でいれたらよかった。
付き合う、と聞いて頭は真っ白になった。うまく言葉が言い表せれなかった。
いろんな感情がせめぎ合って、喉につっかえて出てこない。

その理由は黒子自身にも不明で、まったくわからなかった。なぜ自分が素直にテツナと赤司が付き合うということに喜びを見いだせないのか。
良い兄でいたいのにな、と黒子はおもって、さっきから文字を追えていない文庫本を眺めた。
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誰が一番ひどいってそれは書いているわたしです。

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