5:猫がとおくから微笑んで私を見る
跡部と手塚とリョーマ♀のみつどもえ

こんこんと控えめに叩く音がして、不二はベッドから身体を起こして返事をした。「誰?入ってきても問題ないけど」不二の声に相手は返事をせずに、かといってドアを開けることもしない。突っ立ったまま部屋の前でどうするつもりなんだろう、と不二が二段ベッドから出てきてドアノブをひねって開けると、そこにはお風呂上がりなのか、頬をあかく上気させた後輩が所在なさげに立っていた。不二の顔を目にすると、びっくりしたように眼を見張った。
「どうしたの?誰かこの部屋のひとに用事?いまは、僕以外にだれもいないけど……」
ちらりと部屋に視線をやって不二がいうと、リョーマはひじょうに言いにくそうに口を開いた。
「あー…。じゃあ部屋のなかで待たしてもらってもいいっすか」
「うん。かまわないよ」
あくまで相手の名前は言わないリョーマに不二も言いにくい相手なんだろうと察して追及することはなかった。微笑んで中に入るように促すと、リョーマは首をすこしだけ前に倒して軽くお辞儀をして部屋のなかにはいった。不二以外に誰もいない部屋は、閑散としていた。

「椅子にでも座って待ってたら?別に誰も気にしないとおもうし」
にこやかに笑って奥にある机のところに何脚か並べられている椅子を指さした不二は、またベッドに戻って横になっている。寝ているところを邪魔しただろうかと思い、リョーマはすこし申し訳ない気持になったがそれを言葉にすることはなく、おとなしく椅子に座ってじっと跡部が部屋にもどってくるのを待つ。
不二となんの会話もすることなく、ただ刻々と過ぎていく時計をぼんやりと眺めながら待っていたリョーマは、三十分してようやく目的の人物が部屋に戻ってきたことに安堵して溜息をついた。

「ちょっと。遅いんだけど、跡部さん」
待ち時間の退屈さも加えて、リョーマは不機嫌そうに言うと、跡部も顔をしかめて言葉を返した。
「一時間も待ってねーんだから文句言うんじゃねーよ。それよりさっさと出るぞ」
リョーマの細腕をつかんで跡部はずかすかと部屋を出ようとする。リョーマは半ば引きずられる形で跡部についていくが、後ろからかけられた不二の言葉に振りかえった。
「いってらっしゃい」
ひらひらと手を振られ、リョーマは背筋に走る冷たいものがなにかわかってしまう前に跡部の背中を思いっきり押して部屋を出た。前で跡部なにか文句を言っているが、正直耳になんてはいってこない。
いってらっしゃいの一言だけであんなに恐怖感を与えてくる不二はいったいなんなのだろう、と隣りで怒っている跡部を尻目に、リョーマは頭を抱えたくなった。


「さっきさあ、越前が来てたんだよね」
ふふ、と柔らかく微笑んだ不二の真意を測りかねて、手塚は首を傾げて問いかけた。
「それがどうしたんだ」
一瞬越前が来た、という言葉を聞いてどきりとしてしまったが、不二はおそらく気付いていないと思いたい。この勘の良い男が気付いているという可能性は、大きいのだけれど。
無表情で問いかけた手塚の顔を眺めながら、不二は面白いものを眺めているかのように、楽しげに口元に笑みを浮かべている。
「なーんにも、思わないの?跡部だよ。越前がここに来た理由って」
「………………………」
「不思議だよね。あのふたりって仲良いとか聞いたことないし」
そうだな、と手塚はつぶやいて昨日のリョーマのことを思い出し、顔をしかめた。言い知れぬ不安が手塚の胸の内を支配して離れない。
「なんか意味深だったし……。それに、跡部…まだ戻ってきてないよ。そろそろ消灯だっていうのに」
消灯まであと三十分を切った、と不二は時計を指さして楽しげに笑う。
「トラブルメーカーな後輩のこと、心配じゃないの?」
「この合宿でトラブルなんて……起こさないだろう」
もしかしたら、と自分の頭によぎったものを振り払って手塚は平静を装って返事をする。けれども本を読む手はとっくにとまっていて、不二はそんな手塚の動揺をわかっていながらも、自分は楽しいのか話すことをやめることはなく、むしろ一層楽しげに笑みを深める。
「まだ時間間に合うし、探してみればいいじゃない」
「……誰をだ」
「跡部と越前。もう部屋を出ていってから、一時間以上は経ってるよ」
「……不二、お前は俺に探しにいってこいと言っているのか」
「そうじゃないよ。聞いているだけだよ」
穏やかに微笑む不二に、手塚は頷くことしかできずに、半ば追い出されるように部屋を出た。廊下には、もう消灯三十分前ということもあって誰もいない。
手塚は、頭の隅に浮かんだことを思い出し、まさかそんなことはあるまい、と思いながらも心当たりのある場所へと足を進めた。


リョーマと跡部は、部屋を出たあとしばらく廊下を歩きながらお互いに罵りあっていた。もともと仲良くもなんともなかったふたりだが、リョーマは待たされたことへの苛立ち、跡部は生意気なリョーマの物言いにたいして苛立っていた。それは口の悪いふたりが罵りあいへと発展するのには十分な材料だった。
「ほんとあんたって勝手。だいたいあんたが呼び出したんだから、あんたがいるのが普通じゃないの?」
「待つのくらいすこしは我慢しろよ。お前は俺に文句を言える状況なのか?」
あんまり文句ばかり言うとバラすぞ、と跡部が脅すとリョーマ不満げに押し黙った。それでも怒りは隠さないで、跡部のほうを見ずにそっぽを向いている。
( だいたいこんな時間に呼び出してどこに行くんだか……。 )
リョーマはちらりと横に並んでいる跡部を見上げて、口を開いた。
「つーか、いまから何するわけ。俺をパシらせるならあんたまで来る必要なくない?」
リョーマがそう言うと、跡部は馬鹿かお前、呆れたように溜息をついてリョーマの頬をぺしりと叩いた。
「そんなのお前じゃなくたって代りはいくらでもいるんだよ」
「じゃあ何やらせるわけ。意味分かんない…」
ぼそりと言ったリョーマの細腕をつかんで、跡部は引き寄せた。あっけなく跡部の腕のなかにおさまりながら、リョーマは腕をふりほどこうともがきながら怒った。
「ちょっと!他の人に見られたら……」
「見られなきゃいいんだろ?」
へ、とリョーマが思っている間に跡部はすぐ近くのドアノブをひねって部屋に押し入った。鍵がかけられていなかった部屋はあっさりと開いて、リョーマの希望通りこの部屋には跡部とリョーマしかいない。誰にも見られる心配はなくなった。
リョーマが何か言う前に、跡部はリョーマを部屋にある簡易ベッドへと腕を縫い付けた。抵抗する間もなく押し倒されたリョーマは、下から跡部を睨むことしかできない。
「こういうことがお前を呼び出した目的だったっていうことだ。わかるか?」
「……ふーん。そういうこと」
苛立ちながらも、リョーマは押し倒してきた跡部にたいして屈することは嫌なばかりに強気な口調で返す。おびえてなんかやるものか、とリョーマがじろりと睨むと跡部はふっと笑った。
「暴れて騒いだりでもしたら、いますぐにでも突っ込んでやろうかと思ったが……意外と素直じゃねーの」
そう言うと、跡部は縫い付けていた腕を解放して、ベッドのふちに座った。リョーマも身体を起こして跡部と横に並んで、胡散臭いなあと失礼な感想を抱きながら跡部を見上げる。
照明のついていない部屋は外からのうす明りで見える程度で、リョーマは跡部の表情を細かなところまで見ることはできなかった。だが、きっと意地の悪い笑みでも浮かべているに違いない、とリョーマは勝手に確信する。

「…………抱かないの?」
リョーマが跡部にそう聞けば、跡部は馬鹿にしたように笑ってリョーマを見下ろす。華奢で、女としてはまだ未発達そうな身体。ベストで潰しているという胸のサイズはまだわからないが、年齢通りちいさなお尻は肉があまりついていなくて、やはり子供の身体だった。正直に言うと、跡部が抱くというのにはいささか不安なものだった。
最後までしてしまえば明日の練習に響いてしまいそうだ、と跡部は思いリョーマの身体を引き寄せてスラックスのチャックをくつろげた。そこには何の反応もしていない跡部のモノがあった。それをちらりと見て、リョーマは口を開いた。

「舐めろってこと?」
「そういうことだ。……まさかやったことねーっていうんじゃないだろうな」
リョーマはベッドから立ち上がって、跡部の前に膝をついて見上げた。
「やったことくらい、あるよ」
跡部の言葉にむっとしたリョーマは、むきになって跡部のスラックスへと手を伸ばして自分がしやすいようにくつろげる。下着の上からそっと触って大きさを確かめるように触った。
「……………………………」
上からすこし触って、つんつんとつつくと上から「遊んでんじゃねーよ」と小突かれてリョーマはうるさい、と小さく返した。そして跡部の下着をずらすと、まだ柔らかな状態を保ったそれを取り出してそっと手を添えた。
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なにが書きたかったかっていうと、エロしかないよ!

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