3:甘いかおりと柔らかな身体
跡部と手塚とリョーマ♀のみつどもえ
エロ注意

熱いシャワーにあたりながら、リョーマはそっと瞳を伏せた。合宿五日目、やっと慣れてきたこの環境にすこしの疲労感を感じながら一層シャワーの出を強くした。竜崎による計らいで、リョーマはこっそりとほかの部員たちがつかっている大浴場とはべつに個室のシャワールームをつかっている。けれどもさすがに風呂に水をはるには憚れて、リョーマは十分に身体がほぐせないことに苛立ちを感じながらも、大浴場にはいることは出来ないな、とすこしだけこの性別を恨めしく思う。
のぼせそうなほどに湯にあたっていると、他に誰もはいってくるはずのないシャワールームに、人影があることに気付いた。
「…………だれ?」
シャワールームの扉をすこしだけあけて外をうかがうと、そこにはリョーマがこの五日間ずっと待ち望んでいた人物が立っていて、すこしだけ頬を緩めた。ねえ、とリョーマは口の端をあげて笑った。

「そんなところで立ってないで、入ったらいいじゃん。俺は拒否しないよ。つーかさ、どうせそのつもりだったんでしょ」
手にもった着替えに、リョーマは小馬鹿にしたように笑う。その生意気な態度にも、言われた男――手塚は表情を崩さない。怒ることも、なかった。
リョーマの誘いに乗るように、手塚は服を着たままシャワールームの扉を開いた。手塚の眼下では、シャワーのお湯にかかりながらこちらを挑戦的に見つめるリョーマが肌を上気させていた。

「明日…辛くなるぞ」
手塚の大きな掌がリョーマの少年というにはまろすぎる頬を撫でる。すべらかな肌は、赤く染まっている。
リョーマは手塚の言葉を聞いて、苦笑して首を横に振った。
「まさか」
「それに、持ってきていない」
「外に出せば?」
リョーマが手塚の指をくわえてぺろぺろと舌で舐めながらにやりと笑った。赤く色づいた舌が、誘うように動く。それを手塚がそっと引き抜くと、さらけ出されたリョーマの肢体に手を伸ばす。十二歳にしては発達している体躯は、手塚がつい一カ月ほど前にセックスをしたときにはもう貫通していた。アメリカにいた頃に年上の男としたことがある、とリョーマは数度の交わりを重ねたあとにそう言っていた。
手塚とする前から数回したことがあるという本来ならば十二歳という年もあり幼いはずの身体は、手を伸ばせばやはり子供特有の柔らかさが存在するのだが、鍛えられた手足はほどよく引き締まり、胸元は同年代より豊かで、まだリョーマ以外の女性と回数を重ねたことのない手塚にとっては、とても神秘的なものに思えた。それでも、どうにかして胸を潰して過ごしているリョーマの胴にはいくらかの窮屈そうな跡が赤く染まっていた。

「……っ…あっ…ぶちょ……ぅ…」
成長途中の胸元を優しい手つきで包み込むように触れば、リョーマはもどかしいのか身をよじった。それでもわずかな刺激も久しぶりなせいか、リョーマは股の部分が熱くなるのを感じた。じっとりとした熱に浮かされるような熱さは、この行為の独特なものだと思う。なにより、この瞬間の快楽が忘れることが出来なくて、この行為をやめることは出来ない。…何度も、繰り返す。
シャツもズボンもつけたままの手塚の股間の、ゆるく勃ちあがりはじめたその部分をちいさな掌でさすりながら、リョーマはそっと見上げた。

「ね、部長……口で、しよっか」
自分ももう興奮からか、立つのが辛くなりはじめているのにも関わらずにリョーマは余裕そうな表情でそう言った。手塚もされてもいいと思っているのか、とくに否定することもなくされるがままである。
ぐっしょりとシャワーで濡れきったズボンと下着をずり下げて、リョーマはその部分を口に含んだ。もう顎に弊害をきたしそうなほどに膨れ上がったそれは、ちいさなリョーマの口では入りきらずにあふれてしまう。その溢れてしまった部分を、手で補いながら手塚の様子をうかがった。
まだ慣れないのか、手塚はリョーマが口に含めてすぐに反応を見せていた。真っ赤に染まった耳は、思わずリョーマがにやにやと笑ってしまうほどはやかった。

「ひゃひゃんへにゃいなら、らしへもいいっひゅよ」
手塚を気の毒に思ったのか、そういうリョーマに、手塚は悪い、と短く告げてリョーマの口元にあるそれから精を放った。
ため込んでいたのか、濃いそれにリョーマは口の端からこぼしつつも、それをごくりと飲み込んだ。青臭い味は、何度飲み込んでもやはりすこし顔をしかめたくなる。
その様子をいつも申し訳なさそうに見つめる手塚が見たくてしているとは、絶対に本人には言えないことだった。

「べつに、気にしなくていいのに」
口の端に垂れたままのをぬぐうと、手塚は複雑な顔をしてなにかを言いかけたが、睨んでいるリョーマの表情を見るとあっさりと押し黙った。
「付き合ってるわけでもないんだし、俺達」
そのリョーマの淡々とした態度を目にするのが嫌なのか、手塚は顔をそらした。うんとすんとも言わずに、先程まで好き放題に触っていたのに、いまはリョーマに触れようともしなかった。その手塚の態度を重々承知しているリョーマもあえて自分から手塚の身体を触ろうとはしなかった。痛いほどの沈黙が、シャワールームのなかを支配する。
なんかシラけちゃったね、とリョーマが冷めた声で言って、隣りのシャワールームへと移って行った。そのリョーマの態度に手塚は後味が悪いが、この魅力的だが精神的に疲労を伴った行為が終わったのだと知って息を吐いた。リョーマに口淫をほどこされた部分はもう萎えきっていて、手塚自身リョーマに対して続行できる状態でもなかったと知る。
手塚は溜息をついて、すっかりお湯でびしょびしょになった衣服を脱いで、ついでに汗を流した。何気なくボトルから垂らしたシャンプーの液体から、リョーマの髪と同じ甘い匂いがして、手塚は無意識に目を細めた。


あのあと、手塚はなかなか寝付けなかった。もうシャワールームでの病的な熱こそなかったが、相変わらずセックスの類になると、感情を悟らせなくなるリョーマのことを思い出し気になって仕方がなかったのだ。あのリョーマの、一種の依存症のようなもの――それは改善されることはなかった。おそらくアメリカでの幼いころの性の経験がリョーマにあのような行為をすることを強いているのかもしれない。
けれども、そのリョーマが本当に望んでいるかもわからない不健全な行為の誘惑に、手塚は一か月前から逆らえないでいる。あの高架下のコートにリョーマを呼び出してから、テニスへの姿勢も確かに変わったけれど、それと同じようにリョーマの手塚にたいする態度も変わった。それはどうでもいい人間を見る目ではなく、どこか不思議な人間を見る目―――自分に初めて勝ったから、という理由だけでもない気がした。
そして、その瞳の意味を知るのは、手塚が思ったよりもはやい時期だった。

いつものように部活を終えたあと、なぜかリョーマは用もないのに部室に残っていた。ぼんやりと手塚が部誌にペンを走らせるようすを見ながら、飽きもせずに。
手塚は今でもその時をはっきりと思い出すことが出来た。夏のすこし遅い時間に、窓越しにさす橙色のひかりに照らされて、こちらをじっと見つめるリョーマの姿を。
常日頃から華奢であるとおもっていた体格はやはりこちらが心配になるほどの細腕で、じっと見つめる琥珀色の瞳は猫のように吊りあがり、夜空のようにきらめていた。弧を描く口元は、ふっくらとした薄い桃色の唇で――――
「部長」、と呼ばれた。
細い腕が、ペンを持ったままの手塚を捉える。ふりほどこうと思えば、ふりほどけるのにそれを出来ない手塚を嘲笑うかのように描かれた、いつもは見せることのない笑み。
見たことのない、表情、声。
膝の上にのしかかってくる重みも柔らかさも――――すべてが手塚を麻痺させた。

自分の下で喘ぐ姿に、手塚ははじめは後悔と罪悪感ばかりだった。少女であると知っても、異性として意識することはなかった存在。選手として、抱き始めていた期待。…青学の柱としての、希望。その行為のせいで手塚の信じていたものが壊れてしまったような気さえしてしまい、手塚は穿ちながらも意識を手放してしまいたかった。もちろん、それを許さなかったのはリョーマだったのだけれど。
目をそらし現実を見るのをやめようとする手塚に、リョーマはそらすことを許さなかった。じっと見上げてくる、熱に浮かされた瞳の影にちらつく燃えるような色は、なにを思い浮かべていたのだろう。

行為を終えた後、リョーマは精液で濡れた太股をウエットティッシュで拭っていた。カシスの香りのするそれは、精液の青臭さと混じって奇妙な匂いを醸し出していた。最後はリョーマの太股あたりに吐き出した手塚の精を、恥じらいもなく淡々と拭うその姿に、手塚が違和感を感じたのは言うまでもない。
震えそうになる声を叱咤して、手塚はおそるおそるリョーマに声をかけた。「……すまなかった」と。
とたん、リョーマはびくりと身体を揺らして、行為を終えてから初めて手塚の顔を見上げた。精液の付着した太股をぬぐう手を止めて、リョーマは手塚を凄まじい視線で睨みあげた。
「なんで、謝んの?」
悔しそうなリョーマの声に、手塚はなにを言ったのかをはっきりと覚えていない。この行為をしてしまったのは間違いだったとか、これからはいつも通りしようとか、言ったのかもしれない。
ただわかるのは、そう言っている間に、リョーマは手塚に対して怒鳴り、精液の付着した下着を変えることもなく足早に荷物をもって部室を出て行ってしまったということ。
それからも時々あの行為はリョーマの方から誘いが来て、手塚はあの時の熱に引き戻されて拒めずに逆らえずにその誘いにされるがままでいる。
リョーマが本当はどうしたいのか、わからないまま手塚は繰り返す。
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もっとえろえろしくしたかったなっておもってます

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