目覚まし時計の関係 男子校で寮に入っている設定 赤黒が同室だったらいいなと思いつつ肝心の同室になってからの話ではありません 虹村と黄瀬が出ていますが虹黒でも黄黒でもありません 春に近づく陽気が心地良く、布団のなかで丸まって惰眠を貪っていた黒子テツヤは、先輩の容赦のない起こし方に、潰れたカエルのような声を出してからのろのろと起き上がった。 黒子はぼうっとしたまま、寝癖のついたぼさぼさの髪の毛を適当に撫でつけて、それでも直らないことに対して気にするそぶりを見せずにベッドから這出た。二段ベッドの上なので、ぼんやりしてしまうと危うく落ちてしまう。案の定階段に足をかけてふらついて、黒子は滑り落ちかけていた。 「起きろっつってんだろ」 べしっと頭を叩きながらも、しっかりと落ちかけている黒子を支えてくれる虹村は、すでに制服姿だった。 「はい……。おはようございます………」 ぼそぼそとした聞き取りにくい声色で話す黒子に、虹村はむすっとした顔で「おはよう」と返した。 「…ったく。黒子ォ、お前遅すぎだろうが。何個の目覚まし時計がお前のベッドで鳴ってると思ってんだ。お前が起きて止めろ!」 虹村がいまだに寝ぼけている様子の黒子に、黒子のベッドの上に転がっているいくつかの目覚まし時計を指しながら言った。 「お前の目覚ましでほかのやつが起きたら意味ねえだろうがァ」 「そうですね……」 ぐしぐしと手の甲で眠たくて閉じそうになる目をこすってはこすって、黒子はくああと欠伸をする。 この文句を言いながらもなんだかんだこの一年、中学に入学してから世話をしてくれた虹村との同室も今日で終わりだった。黒子の通っている中高一貫校は寮生と自宅生の両方が存在し、東京からは遠く離れた温かい地方にある私立であった。全国的にも有名な私立であり学業だけではなく部活動も盛んである。とくに、バスケットボール部が。 黒子は小学生までは関東に住んでいたため、寮に入っている。虹村も同様に、元々は関東に住んでいたらしい。自宅が近いと休暇時の帰省もかぶるため、学年は違えど自然と接する機会も多いのだ。部屋も部活動も一緒であった三年生の虹村とは、とくによく接する機会が多かった。黒子がぼうっとしたタイプのため、必然的に虹村が後輩の世話を焼く形になったとも言える。 それに、寮は一部屋に八人まで収容可能であるのだが、この部屋は五人しかいない上に黒子を除いて一年生が一人もおらず、そしてほかの同室の二年生や三年生は朝練が入っているせいで早く起きなければならないため黒子を起こせるはずもなく、結果的に虹村がここまで世話焼きになったのである。 その世話焼かれる日々も終わるのだなと思うと黒子は感慨深かった。まあ、終わるといっても食堂や風呂場を挟んで隣接する高校寮に移るだけで会えなくなるとかそういうわけではない。 「先輩が高校寮に移ったら僕は起きれますかね…」 洗濯から返ってきたばかりの水色のシャツに袖を通しそんなことを呟くと、横で教科書を触っていた虹村が顔をしかめた。 「いや、起きろよ。三回遅刻で欠席一回扱いでお前やべーぞ、出席日数」 まったくもってまともな言葉に、黒子は苦笑いしたくなった。 「努力してます」 「…目覚まし五個がか」 「はい」 「お前が止めろよ。何回も言ってけど」 「……………」 それには「はい」とすぐ答えることが出来なくて、黒子は肩を竦めた。壁にかかっている時計のさす時刻は七時半、そろそろ食堂に行かなければ。 のろのろとした動作の黒子に文句ひとつ言うことなくそれとなしに待っていてくれる虹村に黒子は「すみません、待たせました」と謝った。 「本当だよ。はやくしろ」 もう部屋の入り口で鞄を持って立っている虹村に、黒子は小走りで駆け寄った。 部屋を出ると、寮の廊下には人が激しく行き交っている。 とくにこの三月は三年生が寮を出なければならないため、三年生は部屋の私物の片付けに追われるため、人によっては毎日朝に少しずつゴミやいらないものを捨て移動する準備をしている人もいる。 余裕のかまえで朝ご飯を食べに行く虹村は、とっくに私物などは片付け終えている。 昇降口で靴を取って履いていると、後ろから同じバスケ部の三年生がやってきた。 「はよ、虹村。黒子」 「おー」 「おはようございます」 革靴を足に押し込んで、黒子は虹村とその三年生と並んで歩いた。今日の授業の課題を話しながら歩いている二人の横で、黒子はぼんやりと考え事をしながら歩いていた。 すると、後ろから勢いよく誰かが突進するように抱き付いてきて、黒子は倒れかけた。後ろから匂ってきた香りに、黒子は相手が誰かだいたい頭に思い浮かべることが出来た。 「おっはーよ黒子っち!先輩!」 にこにこと朝から元気よく声をかけてきた黄瀬に、黒子は頷いた。 「おはようございます、黄瀬くん」 「朝っぱらからテンション高くてうっせーぞ黄瀬」 「その有り余ったエネルギーを黒子に分け与えてやれ」 三者三様の返しに、黄瀬はしょぼくれて見せた。 「ひどいッスー先輩たち。黒子っちのこの優しい対応を見習ってほしいッス!」 ぽんぽんと黒子の両肩を叩いてそう言う黄瀬にはいはいと軽くあしらう。 そんなこんなでわいわいとそれなりに騒いで食堂に着くと、もう大半は人が座っていた。 食堂の一番前に並んでいるプレートを一人一人取って適当な空席を見つけて四人は座った。 がやがやと朝の騒がしさのつまった食堂はいろんな人の会話で満ちている。そんな中、黒子はいまだにはっきりとしない頭で黄瀬の会話をぼんやりと聞きながら、たいして美味しくはない寮飯を口に運びながら咀嚼する。味のことは考えていない。 「黒子っちー聞いてる?」 顔を黄瀬に覗き込まれて、黒子はむせた。げほっと咳き込みながら涙目になって激しく頷いた。実は聞いていなかったが、とりあえず頷いて見せた。 その様子に黄瀬も気づいていたのか、顔をしかめて「聞いてなかったでしょ」と非難がましい目で見てきた。 「……正直言うと、そうです。すみません」 黒子が正直に打ち明けると、長い溜息をつきながら黄瀬が肩を落とした。 「黒子っちが朝弱いのは知ってたッスけど」 「はい」 「いま話していたのは黒子っちに関係あることなんスよ」 「…?」 不思議そうに首を傾げながら黒子は黄瀬を見た。 「黒子っちの部屋に、新しく二年生が入る話ッス」 きょとんと目を丸くして黄瀬を見つめた。 「…珍しいですね。転入生ですか」 中高一貫校のため、基本的に転入生は珍しい。高校からは新しく数十名ほどは入るが、二年生に上がる時期での中途入学は滅多にないことである。 「らしいッスよー。うちの学校って海外に系列校あるじゃないスか。そこから来るらしいッス」 「へえ…」 自分の部屋に来ると聞き、黒子はすこし興味がわいた。もしかしたら、虹村のように自分を起こしてくれるかもしれない、同じ学年のようだし。 その黒子の思惑を察したのか、横に座っていた虹村が「じゃあ今度はそいつが目覚まし地獄に遭うわけだ」と呟いた。 「目覚まし地獄って……。黒子っち、また目覚ましの数増やしたんスか?」 前は三個じゃなかったっけ?と首を傾げた黄瀬に、虹村が嫌そうな顔で「二個増えていまは五個だ。しかもこいつは相変わらず自分で止めないんだ」と言った。 「俺が同室だったら目覚ましじゃなくて俺が黒子っちを起こせるのに」 にっこりと女子が喜びそうな笑顔を浮かべて言ってきた黄瀬に、黒子は一瞥して「君が同室だと喧しそうなので結構です」と言ってお茶を呷った。 「じゃ、先に失礼します」 虹村と三年生の先輩に一言声をかけてから立ち上がった黒子は、待ってよーと追いかけてくる黄瀬を無視して食器を片付けに行ったのだった。 *** 黄瀬の転入生発言から一週間後、黒子は見慣れぬ少年が寮の前で荷物を抱えて突っ立っているのを見つけた。真っ赤な髪の毛が目立つ、黒子と体格のたいして変わらなさそうな少年だ。 もしかして、と黒子は近づいた。 「あの」 びくっと身体を震わして少年は振り向いた。 普段から影が薄い薄いと連呼される黒子だが、初対面のこの少年も黒子の存在に気が付いていなかったらしい。 足元にある段ボール箱を指さして、黒子は言った。 「もしかして転入生の方ですか?」 理知的な赤い瞳でこちらをじっと探るように見つめてくる少年は頷いた。 「来たばかりなんだ。寮監に自分の部屋はどこか教えてもらいたいんだが、寮監が見当たらなくて困っているんだ。君はどこにいるか知ってるかい?」 はきはきとした口調で喋る少年だと思った。黄瀬が言っていた通りならこの少年は海外から来たことになるのだが、よどみない日本語の羅列に、イメージしていた人物とは違うなあと黒子は思った。 「寮監室にいると思いますが、いませんでしたか?」 首を横に振った。 どうしようかな、と黒子は思い、今度は遠慮がちな口調で聞いてみた。 「違ったらすみませんけど…もしかして系列校から来た人ですか?」 黒子の言葉に少年はぱちぱちと瞬きをして見せて、ああ、と頷いた。 「今度から二年に入る赤司征十郎だ。もしかして、俺のこと知ってるのか?」 「友人が僕の部屋に転入生が入ると言っていたので。合ってるみたいですし、部屋に入りましょうか」 少年の足元に置かれている段ボール箱を二つほど頑張って抱えて、黒子はよろけた。 「いいよ。俺が運ぶから」 「い、いえ……。同室ですし、僕も運びます。一人でするよりは二人でした方が楽ですから」 と言いながらも、黒子はふらふらとした足取りである。革靴を放り出すように脱ぎ、廊下のちょうど中間あたりに位置する部屋まで頼りない足取りで運ぶ。 部屋の前までたどり着くと、一旦箱を置いてから部屋のドアを開けた。虹村ともう一人の三年生は高校寮に移り、二人ほどはもう昨日のうちに帰省しており、この部屋はいまは黒子しか使っていなかった。 人気のない部屋に少年も入ってきて、黒子を見つめた。 「運んでくれてありがとう。君、名前は?」 「黒子です。黒子テツヤ…」 ふう、と痺れかけた腕をさすって黒子は赤司に笑いかけた。 - - - - - - - - - - ■赤司くんと黒子くんが寮で同室とかいいなーと思って思って耐え切れず書きました。 次は原作沿いにするとか言ってたけどまたパラレルになった ■簡易設定 赤司→フランスの系列校にいた 親の仕事の都合で日本に帰国 天才的な頭脳で編入試験を突破し余裕の編入 自宅は京都もしくは東京 同室の黒子くんの目覚まし時計の役割をするようになる バスケ部はいる 黒子→普通に中一からいる 黄瀬とは同じクラスでまあ仲が良い でも青峰との方が仲が良い(FBより) 赤司を目覚まし時計にしようとしている やっぱり体力はない バスケ部で1階寮 黄瀬→イケメンなので近所の女子学生にきゃーきゃー言われてる 中一のくせに文化祭で女に囲まれていたせいで微妙に男から不評 バスケ部で4階寮 部屋開いてるなら黒子のところの部屋に移動したいなーとか考えてる(ホモではない) 自宅は東海 緑間→2階寮 赤司が来るまでは学年トップ 同室の紫原がお菓子のカスを部屋に落とすのでそれを掃除するのが日課となっている ラッキーアイテムをゲットするために朝早起きし寮生なのに校門から出ていき調達しに行く 自宅は関東 バスケ部 青峰→3階寮 先輩からグラビア雑誌をもらって目覚めた 夜中にこっそり抜け出して朝から山へザリガニ釣りに行って謹慎処分を受けたことがある 自宅は関東 バスケ部 紫原→2階寮 近所のスーパーのお菓子の品ぞろえが不満 寮飯がまずいことについては目をつむっている いろんなことを緑間に注意されるので面倒くさがっている 自宅は関西 バスケ部 虹村→面倒見の良い先輩 文句言いながら面倒を見てくれる 新しく入ってきた後輩の赤司とわりと仲良くなる 癖の強い後輩に悩まされてる 適当な設定です 寮っていいなーと思います |