首輪の紐がほどけてる おまけ
義理?の兄弟で赤黒
赤司くん(16才)と黒子くん(28才)です

テツヤは古書店から出て、明日の朝ご飯分のパンを買うためにパン屋に向かった。片手には重さを示すように紙袋の紐が指に食い込んでおり、店に行く順序を間違えてしまったかなと思った。
歩く道の街路樹は葉がもうとっくに散っており、肌に突き刺すような寒さがこの国の極寒具合を示している。元々、体温が高いわけでもないテツヤは寒さが苦手だ。日本は寒い時もあれど一定期間に過ぎなく、少なくとも三月にもなってここまで寒いということはない。

ああ、寒い。そう思いながらパン屋に入った。
見慣れた店員にこれとこれ、と言ってバゲットといくつかの甘いパンを紙袋に入れてもらい抱える。大丈夫?持てる?と聞かれ頷いてよろけながらアパートメントへと帰る。
急な階段をのぼりながら、よろけないように気を付けてのぼりきると、部屋の前に同じ大学の友人が立っていた。

「あれ? 何か用ですか?」
声をかけると、青年は困ったように振り返った。動揺した顔で、「お前に客が来てるぜ」と言った。
珍しいこともあるものだな、と思ってその人物を探す。きょろきょろとしていると、青年が「寒いし俺ん家にいる」と言った。
「すみません」
と言うと、青年は肩を竦めた。
「いいよ。別に。ただ、なんかマジでお前のこと知ってそうだったから…大事な用事かと思って」
青年が気にしてないといった態を取るので、テツヤは納得することにした。
ただそこまでして会いにくる人物に心当たりがなく、テツヤは大学やアルバイト先での知り合いを思い浮かべて唸った。いったい誰だろう。
青年がテツヤの隣りの部屋である自分の部屋の玄関を開けて、テツヤを中に入れた。玄関には青年のよく使うスポーツシューズの隣りに、見慣れぬ革靴がある。
本当に誰だろう、と思いながらテツヤは部屋の奥へと進んだ。そして、リビングのソファに座っている後姿を見て、茫然とした。

「で、結局誰だったわけ? こいつ、詳しく話さねぇからわけわかんねぇんだけど」
ぽりぽりと青年が頭を掻きながら後ろからやってきて話しかけてきても、テツヤは答えれそうになかった。ただ目の前に座っている人物が、本当の本当にその人であるのか信じられなくて、その後ろ姿を穴があくほど見つめるしかない。
先に動いたのは目の前に座っていた少年だった。振り返って、茫然としているテツヤを見てくすくすと笑いをこぼした。

「思ったよりも早かった――――かな…?でも、これで春から同じ大学生だ」
記憶にあるよりも身長の伸びた、顔つきも変わった少年いや、青年がいた。目も醒めるような真紅の髪の毛に、それと同じように色づいた瞳。

ぐっと涙が出そうになるのを堪えて、テツヤは駆け寄った。手に持っていた荷物もすべて放り出して、だ。代わりに後ろにいた青年がそれを受け止めた。「パンが潰れるだろ!」と怒ったように言っているが、テツヤには聞こえていなかった。
もう目の前にいる人物しか目に入っていなかった。

「会いに行くって言っただろう」
「――っ…はい」
てのひらが、テツヤの頬を滑る。優しく愛のある手つきに、テツヤはたまらず手を伸ばして抱きしめた。
「これからはずっと一緒だ……テツヤ」
「征十郎くん」
テツヤは涙がぼろぼろと零れたまま、向きなおる。これほどの幸福感に満たされたことはあろうかとテツヤは思った。その身体の温かさが愛しくて離しがたくて、テツヤはシャツをつかむ手に力を込めた。
こちらを見下ろして微笑んでいる征十郎は、涙をこぼしたままの頬を指で拭ってやった。

「ただいま」

TRUE END.
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最後までお付き合いいただきありがとうございます。
シリーズ最初の投稿が昨年の12/12という酷さ…。むしろ完結出来たことに驚いています。行き当たりばったりだったので。
最後のおまけですが、黒子はまあどっか寒い外国に住んでる設定です。
することは特にないので、興味のあった学部に進んで将来どうするか決めようという感じです。
そして高校を卒業した赤司が、黒子の家のことを全部片付けてきて追いかけてきてのトゥルーエンドという感じなのです。
ちなみに黒子の隣りに住んでる男(仮)は某火神くんです。
大学生らぶらぶ赤黒編書いてもいいようにこうしたんですが、やっぱり紆余曲折してるあたりが一番燃えるのでらぶらぶ編はいらないですね。

もうひとつのアナザーエンドを見る


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