首輪4

そのテツヤの言葉に、征十郎はぽかんと口を開けて大層間抜けな顔をして穴があくほどと言った態でテツヤを見つめた。その顔は、もしかして嘘じゃないか、僕を騙そうとしてるんじゃないかと言ったような疑いの眼差しが込められており、これまでの自分の行動言動を鑑みると仕方がないことだと思いながらテツヤはかぶりを振った。

「嘘ではありません。君を愛しています、今も昔も」
「……っ」
征十郎が恥ずかしげもなく言い切ったテツヤを前に、わずかに動揺した。二度目の愛しているという言葉に頬をやや赤く染め、照れたようなようすをうかがわせている。

「本当に…?」
涙で濡れたままの頬を、擦りながら、征十郎は訝しげに問う。

「兄さんはいつからか僕に冷たかった…今更、どうして」
征十郎はテツヤからぱっと視線を逸らしながら問う。視線を逸らしたのは、見つめてくるテツヤの瞳に、隠しようもない征十郎への愛情があらわれていたからだ。
その瞳を見つめていられるほど、征十郎はテツヤから向けられる情熱に慣れてはいなかった。
それを見越していたテツヤは、繋いだままの手を握り返して頷いた。

「理由を言えば君はどう思うかな………すこし、怖いです」
「怖い? 兄さんが?」
驚いたように言う征十郎にテツヤはゆっくりと頷く。

「君は信じてくれないと思いますが、僕は君のことに関してはいつも臆病で及び腰です」
「……………………」
「臆病で、どうしようもない奴なんです。僕は」
征十郎のさらさらとした長くなった髪の毛を指で梳いて、テツヤは瞼を伏せた。
今度はテツヤからそっと征十郎の唇へとキスをし、離れてから困惑気味の征十郎に笑いかけた。柔らかで優しげな笑みは、征十郎に昔を思い出させた。

「話の続きは僕の部屋でしましょう。ここで話すのもなんですから」


そう言ってテツヤは征十郎を自室へと案内した。
あの手紙や写真を見つけて以来久しぶりに入るテツヤの部屋に、征十郎はどぎまぎとした。あの時に感じた熱を思い出して、わずかに羞恥で赤く頬を染める。
それを微笑ましく眺めて、テツヤはソファへと誘う。隣りに征十郎を座らせて、

2013/11/26 22:08



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