義理あにいも 模索1 (R18?)

ふわりと香るシャンプーの清潔な匂いに、アーサーは心惹かれた。
ふと隣りを見て、アーサーは指先に馴染むペンシルをくるりとまわして、隣で苦悶の表情を浮かべながら問題集と格闘し、唸り声がかすかに聞こえる少女に聞こえるように呟いた。
「………シトラス」

ぼそりと吐かれた言葉に、ノートとにらめっこしていた少女はぱっと顔を上げた。
縁取られた綺麗に生え揃った睫毛に、くるんと丸い黒い瞳、そして透き通るように白い清潔感のある肌。可愛らしい印象を与える見た目通りの、鈴の鳴るような声を上げる。

「シャンプー、匂いましたか?」
自分の髪の毛の一束をつかんで、くんくんと匂ってみる。確かにシトラス系の爽やかな香りがして、菊はなんとなく微笑んだ。

「最近変えたんです。良い匂い…でしょう?」
そう言えば、アーサーは頷いた。
「甘くなくて、菊らしい…」
うっとりと目を細め、愛おしげに見つめられて、菊は真っ赤になって苦笑した。
この兄は、なんというか、時たまこのような情熱的な発言をする。それに、菊はほとほと困っていた。甘い言葉にはどう返せばいいのかわからず、苦笑するしかない。そのことで不機嫌になられたことはないが、兄がどういう意図があってこのようなことを言うのか、まったくわからないのだ。

「あ、その、兄さん、ここ…わからないんですが……」
菊は気まずくなって、火照った顔のままアーサーに示した。

さっきまでのやけに甘い空気などなかったかのように、アーサーは頷くと真っ白なページにさらさらと数式を書き始めた。
それに菊は、ややぼんやりとしつつもじっと見つめた。

2013/11/19 01:16



prev|TOP|next


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -