thank you !
「寒いです」
「だからもうちょっと着こんだら、って言ったのに」
「でも・・・だって、」
貴方とクザンの周りにはきらびやかな電球がさまざまな色で点いたり消えたりしている。
その光に照らされる人々。彼らの顔を見ると普段とは少し雰囲気が違うことは目にも明らかである。 少し照れたようなほんのりと赤い顔。
(ちょっとくらい、おしゃれしたい・・・)
久しぶりに着たワンピースはふわりふわりとして風がひっきりなしに足の間を行き来しているし、 マフラーを巻いているとはいえ鎖骨も見えている。
普段からハーフパンツで生足を公衆の目の保養として(もちろん本人は気付いていないが)サービスしている貴方でも さすがに今日の底冷えする寒さには白旗を上げるしかない。
(それに、こんな可愛い服は私に着られるべきじゃないか・・・)
「服、とりに帰ります」
少し拗ねた声で頭を下げ、貴方は海軍本部の寮へと帰ろうとした。
しかし、手を掴まれ、その動きは強制停止させられる。
ばさっ
頭の上から温かい布がかぶさる。
「・・・クザンさん風邪ひきますよ」
貴方はそれがさっきまでクザンが羽織っていたジャケットだとすぐに分かった。
「これ着ときなさい」
「だからクザンさん風邪ひ・・・かないですね」
「なんていうか、本職というか」
ヒエヒエの実。 もとより身体に絶対零度の冷気をため込んでいる。
(お腹とか冷えないのかなあ・・・)
「ともかく、ありがとうございます」
「気にしないで。俺のほうこそ貴重なワンピース拝ませてもらってるから」
「・・・へ・・・変じゃないですか」
「うん、可愛い可愛い。いっそ普段からそれ着ときなよ」
「ホントですか!わー!よかったあ・・・」
貴方はぴょんぴょんと跳ねた。
「あんまり飛び跳ねてると見えるちゃうけど、見てもいいの?」
「中に見えてもいい黒いの履いてるので、もしも見られたとしても大丈夫です」
ぴらり
クザンはひらりふわふわと揺れるワンピースの裾をそっと上に持ち上げた。 あくまで自分以外の男に見えないように。
「・・・残念だけど、俺からすれば普通の黒いパンツと変わらないよこれ」
「な!!そんなあからさまに捲らなくたっていいじゃないですか!!!」
end.
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