thank you !
くん、くんくん!
「え、ちょっと。どうしたの?」
「クザンさんから女性ものの香水の香りがします」
「鼻いいんだねェ」
「! 開き直りですか!けしからんですね!」
貴方はソファに座るクザンの肩を後ろからくんくんとにおった。
「そんなににおう?」
「えぇ、フロリエンタルな香りがぷんぷんと」
いったいどこのセクシーな女性と戯れてきたのか。 貴方の頭にはポン、ポン、と色気の化身のような女性が思い浮かぶ。
「(・・・悔しいですが)いい匂いです」
「こらこら、そんなにくんくんしないの。おじさん変なスイッチ入っちゃうよ」
「いっそ入ればいいです」
「え?いいの?」
思いもよらぬ言葉にクザンは顔を貴方のほうへ向け、キョトンとした。
「だから・・・」
泣きだしそうな顔を見て、クザンは急いで身体ごと貴方のほうへ向けた。
「違う違う。もう、そんな顔しないの」
そう言ってクザンは頭を撫でた。
「クザンさん・・・」
「ごめんね、変な疑い掛けさせて。大丈夫、これサカズキの香水のにおいだから」
一瞬、二人の間に、間が開く。
「へ? でもこれはどう考え・・・いえ、どう嗅いでも女性ものの香水の香りですよ・・・?」
確かに、貴方が嗅いだそのにおいはフロリエンタルであった。フローラルさに強くスパイシーな香りが合わさったセクシーな香りが、まだクザンのほうからふわふわと流れてくる。
「うん、でもサカズキのなんだよね。さっきサカズキのとこで遊んでたから、そのとき移ったんだと思うんだが・・・」
「(遊んで・・・?)そうなんですか。サカズキさんが・・・何故また?」
持ち物すべてにこだわるサカズキ。その彼が女性ものの香水を愛用しているとは思えない。
「男性ものと間違えた、なんてことはないでしょうし・・・」
(いい香りだからいいのかな?最近兼用のものもあるって聞くし・・・)
「多分なんだけど、こないだのサカズキの誕生日にボルサリーノがあげたんだと思う」
「ボルサリーノさん・・・」
「じゃないとサカズキも付けないと思うんだよね。女性ものだって気づいてるだろうし」
「友人想いですね、サカズキさん!」
「ねー」
「クザンさん、そういえば最近香水の香りしませんね」
「うん、使ってたの切らしてね。貰いものだったし、新しく買うのも面倒だから」
「へえ」
「そこは『私が新しいのあげます!』って言うとこじゃないの?」
「? 欲しいのですか?いいですよ、今度買ってきてあげます」
「いや、そういうニュアンスじゃなくって・・・。『私好みの香りであなたを染め上げます』みたいなね、」
「何キャラですか。それ」
「だって一度は言われてみたいだろ。俺が香水買ってきたらつけてくれる?」
「はい、つけますよ?」
「・・・そっか、じゃあ俺好みの香りに染め上げてあげる」
「・・・ッ!」
ぼんっ
真っ赤になった貴方を、クザンは「してやったり」という顔でにやにやしながら見つめた。
(官能的な台詞は心臓に悪いなあ・・・)
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