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「愛してる」
口を出た言葉は男の不安意識に深く深く突き刺さる。
「なんでそんなことこの場で言うのよ」
「なんとなくですよ、ふふ」
悪戯を思いついた子供のように、無邪気に笑う。 しかしどこか憂いを帯びて、その顔は笑う。
「昨夜散々聞いたってのに」
「わー! またそんな恥ずかしいことを・・・!もう!」
昨夜の情事がスズの頭にぼんやりよみがえる。 青雉の腕の中で愛を叫び、呟き、零した昨夜のことが。 頭をぶんぶんと振って、スズはそのことを気にしないようにした。
戦いまであと少ししかない。
「・・・この戦争が終わったら、きっと世界は変わってますよね。 きっと今までの普通が普通じゃなくなっているんですよね。」
日が昇ってすぐの冷えた空気を感じるように、スズは空を見上げながらポツリ、ポツリ、と言葉を落とす。
青雉は何も言わず、それに耳を傾けた。
「ドフラミンゴさんが言ってました。 『勝った奴が正義だ』って。 もし、海軍が負けるようなことがあれば・・・」
「私たちの信念は、 この誰かを幸せにしたいって気持ちは、悪者になるんですかね」
ぐす、とスズは涙ぐんだ。
「助けたいと願った人達に、いつか消されてしまうんですかね・・・っ、」
「・・・負けなきゃいいことだよ。 ほら、士気に関わるからしゃんとして」
そういって、青雉はポケットからハンカチを出してスズに渡す。
「ありがと、ございま、ずっ・・・」
「勝つんだよ、俺たちは。」
「はい、」
2人の声は寒さのなかに響く。
「正義は勝たなきゃダメ、でしょう?」
「はい・・・!」
* end !)Happy? Bad?
*prev next#
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mokuji |