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「マリージョア・・・マリージョアだあ」
大きな港にスズの乗る軍艦はゆっくり吸い込まれる。 聖地マリージョアという名にふさわしく、波止場一つとっても他の島のものとどこか違う気がする。
スズは初めて降りるその地にキラキラと目を輝かした。 ぐるりと横に伸びる大地。それのなんと偉大なことか。 胸の奥から疼く気持ちが溢れそうなのをどうにか押さえる。
海に、大地に、空に、手を振り舞うスズを見かねてセンゴクが口を出した。
「おい、あまりはしゃぐんじゃない・・・まぁ、お前はいつも真面目だから少しくらいなら目をつむるが。軍艦を降りる時はしゃんとしろ」
「っ!失礼いたしました! 了解です!」
スズは敬礼をしてから頭をさげた。
わー!
うわー!
(海の色が濃いー!)
軍艦が停泊するまで騒いでいい、とセンゴク元帥の許可を得た(と判断した)スズはめいいっぱい目の前の景色を堪能する。
鼻腔をくすぐる潮のかおりは濃く、風も質量を持ったようにしっかりしている。
ここ数日、執務室に缶詰状態だったスズ。久しぶりに出た海は歓迎してくれているように感じた。
「そんなに楽しいか?」
センゴクはこんなにはしゃぐ部下を今まで見たことがなく、不思議そうに尋ねた。
「はい、海が大好きなもので」
「うむ、海兵としていい心がけだ。」
「はい!」
しばらくすると船はゆっくりと止まり、スズやセンゴクたちは下船した。
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mokuji |