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「スズ」

耳元で熱っぽく名前を呼べば、彼女はゆで上げたタコのように真っ赤になった。

「相変わらず可愛いねぇ」

次は右手で後頭部をゆっくりじっくり撫でる。
スズの髪は柔らかく、撫でる側の青雉は気持ちよさそうにしていた。


「青雉さん・・・」

先ほどまで黙りこんでいたスズがぽそりと呟いたので、青雉は撫でるのをやめて、その手を頬にあて上を向かせた。


「降ろしてください・・・っ」


スズは青雉の膝の上で何かを必死で耐えるように真っ赤な顔をして、目を伏せていた。


「いいじゃないの。いまさらそんなこと気にする仲じゃないでしょうに」

「でも、時と場所を選んでくださいっ」


ここは俺専用の執務室だ。
誰も入ってこないし、二人きりだし、何が問題だというのか。

青雉の頭にそんなすこしズレた疑問符が浮かぶ。


「たまにはいいじゃないの」


「よくないです!
恥ずかしいので今すぐ降ろしてくださいませんか」


「い・や・だ」


「・・・大きな子供め」


ぷい、とそっぽを向くスズ。
つっかえ棒のように伸ばした腕はさらに距離をあけようとぐいぐいと青雉の胸を押している。

(力じゃ俺に敵うわけないのにねェ)

青雉は逃がさないようスズの腰にまわした腕に、ぐっと力を入れて抱きしめた。

「っひゃ!」

明らかな力の差につっかえ棒は無効化され、呆気なくスズは腕の中に収まってしまう。


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mokuji

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