署長サンプル 2
「マゼラン署長・・・?」
「だから、何度も言わせるな。お前を明日の明朝、海軍本部へ送る」
「なんで・・・」
「それが命令だからだ。」
いつもの顔で、鋭く言いきった。それはそのままの鋭さでスズの頭の中をぐり、とえぐる。 あまりにもそれが痛いから、耳から何から麻痺してしまいそうだ。
「そんな・・・」
ボンヤリとした明りの向こうでスズが地べたに崩れた。 嫌だ、嫌だと声を漏らし、震えながら膝を抱く。
「・・・あんなとこ、帰りたくない」
腕だけだった震えが、いつの間にか顎にやってきて、奥歯をがちがちと鳴らさせた。
「あんな奴ら、大嫌い!」
ギリ、と唇を噛みしめるとスズは急に立ち上がる。
「わたしは、ここで!これ付けて!・・・死ぬまで、ずっと、」
あなたに飼われていたいのだ
そう、告げるのは何か卑怯な感じがして語尾は濁した。 持ち上げた枷で拘束された腕が虚しく下がる。
(まったく・・・)
マゼランはスズのほうへ歩みよるとゆっくりとしゃがんだ。
「お前は囚人とは違う。ここにいるべきじゃない」
「・・・」
「憎むなら世界政府に捕まった自分を憎め。」
「・・・捕まらなかったら、マゼラン署長に会えてない」
マゼランをじっと見据えてそう言った。燃えるようなルビーの目は今日ばかりは悲しみの青を帯びていた。
「だから捕まったのは嫌じゃない」
「そうか・・・」
その告白を聞いて、先ほどまでの平然としたマゼランの顔は崩れる。 本人が喋らないから、代わりに寄せられた眉がつらいと叫ぶ。
「・・・すまんな、何もしてやれん」
「うん、わかってる。わかってるよ」
「俺も少々、お前に構いすぎた」
「マゼラン署長はスズが嫌い?」
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mokuji |