署長サンプル 1



「はい、はい、」

マゼランは外から掛かってきた伝電虫と通話していた。

「はぁ、はい・・・そうですか、わかりました」

声は至って普通なものの、電話先の相手には見えない顔は苦虫を噛み潰したような表情が塗りたくってあった。


ガチャン


伝電虫を切ったと同時に深いため息が出た。

「はぁ・・・急すぎるだろう・・・」

まいった、と顔を覆う。


通話の相手は海軍本部もとい、海軍本部にある研究室であった。

『モルモットを早急に送れ』

モルモットとはスズのことである。
彼女の血を定期的に、また余分に求められたときはその都度、マゼランは研究室におくっていた。
これはスズが監獄に入れられたときに定められた取り決めで、マゼランの意思によるものではない。
あくまでスズの所有権は研究所にある。
監獄へは預けられているだけだ。


「何と言ったものか・・・」


悲しいほどに、自分に懐いたモルモット。

今回の電話の内容を話せば・・・どうなるかくらい火を見るより明らかだ。


(・・・あいつなら死ぬなんて言いかねないぞ)


最悪の展開がマゼランの頭のなかで何パターンも浮遊する。



「自決なんて騒ぎにならなきゃいいが・・・」

とりあえず目先の仕事を片付けるために彼はデスクについた。

それが気休めにもならない逃避だと、彼も重々理解していた。


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mokuji

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