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後はクザンの力が圧倒的だった。
首がいきなり凍結し息ができない海賊をクザンが酒場の窓から外へと放り投げて、その男の横っ腹に蹴りを一発、二発。男が喚くものだから顎にも一発。

ぴくぴくと痙攣するようにうずくまる男の髪をひっつかみ、立たせた。

「よかったじゃない。最後に美味い酒が飲めて。なにしろスズのいれた酒だ」

「ま」

男は「待ってくれ」と言う暇もなく、地面から頭の付け根まで氷ついた。

「っあああああああ」

全身に刺すような痛みが走っているのだろう。顔は苦悶の色に満ちている。


「あの子のお腹、柔らかかったでしょ?白いお腹。お前のその汚い手で触っていいもんじゃ・・・ねェよなあ?」


クザンは男の凍った左腕の手首から先をもぎ取るようにして折った。

「な、なに、すんだよおお」


「・・・ああ、右手だったか。ごめん、間違えた」


なんのためらいもなく、右も同じように折った。

「くっ・・そ!くそォ!」

凍っているから痛みを感じないのであろう。痛みよりクザンの行動に恐怖しているようだった。


「お前の声はもう聞きたかないよ。もういい、満足した」

そうして、そこに完全な氷のオブジェが出来上がった。









私の声が聞こえたのか、聞こえなかったのか。クザンは男の下半身も執念に踏み壊す。

冷凍された肉塊を見つめるその目は絶対零度だ。
よく見知った私ですら心の臓から凍てつく感覚を覚える。


「スズ」

破壊に満足したのか、クザンは酒場の入り口で脱力している私に歩み寄った。

「怪我してない?」
「・・・大丈夫です」
「ああ、まだ海楼石はずしてなかったな。かして」

男がそうしたように私の左手をとり、薬指から指輪をはずした。

「こんなもの薬指なんかにはめて」
「私の意思じゃないです」
「生意気」
「上司に似たんです」

クザンは指輪をジャケットのポケットへ仕舞い、薬指の指輪がされていた場所を噛んだ。

「いたッ」

犬歯でがりがりと噛まれる。
血は出そうもないが、それなりに痛い。

「リスでもそんなとこ噛みませんよ」
「なんでリスと比べるかなァ」

・・・ガリッ

「いッ!!」

ひときは強く噛まれてから、やっと解放される。

指には歯型が残っていた。皮肉にも線の細い指輪をしているようにも見える。

「サディスト」
「かわいい子には悪戯したくなるんです」
「・・・限度があります」

きつい目で睨んだが、彼の涼しい顔は揺らがない。

「噛まれたくなかったら、今度からそこの指に変なものはめないことだね」

海賊に向けていた目と全く違う、熱のこもった目を向けてそう言った。



「わかりました。変な上司から何か頂いても絶対はめません」

「ああ、ボルサリーノあたりは特に気を付けて」

ボルサリーノさんは変な上司なんかじゃない。
あなたです、あなた。

「ボルサリーノさんなら・・・いいかなあ」

「今度は指がちぎれるほど噛むから」


クザンは私の左手をとって、歯型の残ったそこをぺろりと舐めた。


end.


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mokuji

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