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周りの悲鳴や嗚咽と引き換えに、スズの痛みはスッと引いていった。

すっかり回復した足で立ち上がると、彼女は前へと進んだ。
倒れた郎党の後ろから、まだまだ仲間はやってくるのだ。


(あいにく、弾切れ。こっちの子は折れてしまった。)

脇に転がるカトラスをそっと撫でる。
もう、腰に下げることは出来ない愛刀。ここで別れるしかない。

空の弾倉を持ったもう一人の相棒はベレッタM92FS拳銃。
背中に下げて走り回るには大きなカラビナーは不適なため、今日は拳銃のこちらを持ってきた。

(あぁ、カラビナーが今ここにあればいいのに)

残されたのは、太もものベルトが孕んでいるスローイングナイフのみであった。


(とにかく、これでどうにかしなくては)


太もものベルトに手をやり、ナイフを指の間に掴んだ。


「いたいた」

いざ投げん、とした時に真後ろから聞きなれた声がした。


「あ・・・クザンさん・・・」

「ちょっと待ってね。パルチザン」

「ぐああッ」
「あああ!!」

ひょっこり現れたクザンはスズへ向かってくる敵へ氷の矛を飛ばした後、彼女に向き直った。

「こんな前線に出て、無茶して。駄目じゃない。スズちゃんの持ち場はもっと内地でしょ」

「内地じゃ・・・私は戦えませんから」

無差別に傷を移動させる範囲攻撃。大勢の敵を相手にするのにとても優れた攻撃手段だが、他の海兵もたくさんいる内地では使えない。
だからスズは持ち場を離れ、海賊船が停まっているすぐ間際で戦っていたのだ。


「ここらは俺に任せて、ほらあっち戻る。わかった?」

「! クザンさん、それ・・・どうしたんですか・・・!」

(またこの子は人の話を・・・)

困った顔をするクザンに駆け寄り、スズは手をクザンの顔のほうへ伸ばした。

「血の痕・・・。どこか怪我したんですか」

襟の内側に血のかすれた痕。その場所から考えて返り血ではないであろう。
スズは心配そうに見上げた。

「体当たりされちゃって口の中切っちゃって」

なんてことないよ、とクザンはスズの頬を撫でた。

「む・・・でも口内炎になっちゃうかもしれませんよ」


ふふ、と笑うとクザンの傷をすべて引き受けた。


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mokuji

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