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「っクザ、ンさ む、ぁ」
口に侵入しねっとりと自分の舌に絡む彼の舌を押さえこみつつ、合わさる唇の隙間から彼の名前を呼んだ。
「っ・・・」
恍惚としたスズの顔。 まさに情事中と見間違いかねない上下する肩と汗ばむ首。 名前を呼ばれて口を離したクザンの目に、欲情をかりたてるには十分すぎる光景が飛び込んだ。 名残惜しく自分の口に仕舞い込む舌にはどちらのものとも言えない唾液。
いますぐスズをどうにかしたくなって、クザンはスズの襟元に手をかけた。
しかし、すぐさま彼女がそれを制止する。
「た、た タンマです!!」
「なんで?いまいいトコでしょ」
「あ・れ!」
肌蹴かけた服を押さえて、足の間に割りこんだクザン足をのけて、しゃんと座るとスズはさっきまで青雉がハンドルを回していた小さなかき氷機を指さした。 かき氷機の中に置かれた器にはなみなみと水が入っていた。
「解けちゃったじゃないですか・・・」
スズはかき氷機の近くに歩いて行くと、しょぼんと頭をうなだれた。
彼女を追いかけてクザンも近寄る。
「うぅ・・・かき氷食べたかったのに・・・」
「また作ってあげるよ。だから「ホントですか!じゃあさっそく作ってください」
うなだれた頭を持ち上げて、それこそ身体ごとピョンと跳ねそうな勢いでスズはクザンのほうへ向き、手を握った。
スズがあまりにも嬉しそうにするものだから、クザンは仕方ないという顔で新しい器をかき氷機にセットする。 そして何も持っていないはずの掌に手ごろな大きさの氷を出現させ、それをかき氷機の刃の上に置いた。
『だから先に向こうの部屋で』というクザンの下心の詰まった言葉は、太陽のように輝く彼女の笑顔の前でただただ解けていった。
*end
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mokuji |