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「で、氷出してあげたんですか?」

麦穂のような金糸の髪がうちわの風をうけて揺らいだ。

「だってさァ、早くこっち来たかったんだもん」

氷出すまで帰してくれそうになかったんだから、と文句をぶつぶつ言いながらクザンは右手に持ったハンドルをきこきこと回した。

「いいじゃないですか、減るものではないでしょう」

「・・・集中力が削れた」

「それは大変」

仕事に回す集中力まで削れてしまったのなら大事だ。
普段ですらまともに机へ向かわない上司への鼻からのため息を、彼女は持ったうちわで顔半分を隠しながら吐いた。

(相変わらず、面白い人だなあ)

幸せを詰めたようなため息だった。


「スズちゃんは幸せものなんだよー」

ハンドルを持った手を止め、空いた手で器を右へ少し回す。

「こんな暑い日に俺と好きなだけいれるんだから」

そう言って、もう一度右手のハンドルを回す。


「ふふ。心外です」

スズは手に持ったうちわをビシッとクザンへ向けると艶のある笑みを浮かべた。

「クザンさんが私といたいんじゃないですか?」

くす、くす。
涼風のようにその声は部屋に響いて、クザンの耳にも心地よく届いた。

(敵わないなァ)


「スズちゃんはこんなおっさんと一緒で鬱陶しくないの?」

「私が暑苦しいほどにクザンさんのこと大好きですからね」

鬱陶しさなんて相殺です。


へら、と笑って恥ずかしげもなくそう言ったスズに、たまらずクザンはキスをした。


「ーッ! !! 」

慌てて彼を退けようと胸を押してみるが、頭の後ろの腕と顎を掴む指は離れない。
酸素が足りないからか、他の理由からか、スズの顔はみるみる赤くなった。
こんなにも頬は熱いのに、不思議と心地いいのは多分、彼がヒエヒエの実の能力者で私はだから涼しくて・・・とスズの頭の中はくるくると回転する。
そうしている内に苦しくなって、重なる唇の隙間からどうにか酸素を吸おうとした。

その隙間からすかさずクザンの舌がスズの口へ侵入する。

「む、ふっ・・・ん。」

「・・・」

息も絶え絶えのスズとは対照的にクザンは息をしなくても平気だと言わんばかりだった。


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mokuji

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