27:黒服のカーネ


ステンレスがぶつかり合い、無骨な音とともに踊る。
その身をふるうたびに芳しい香りが広がる。

プラチナブロンドを後ろで撫でつけたバトラーが彼の顔よりも大きな皿を片手に、練り歩いていた。
行く手を遮るのは芳醇な湯気、そして鋭い目つきをしたシェフたち。

「それ、おひとついただけますか」

「そこのパスタも、ええそれくらいで結構です」

「ああ、バゲットの一番新しいものは?」

「何か口当りのよいデザートは?」

左手に乗せた皿を泳がせるようにたくさんあるコンロの周りを順々に歩き、次から次へと料理をのせていく。
黒い燕尾服の男が声をかければ、シェフは顔も上げず、されど的確に皿へと料理を盛り付けた。
その一連の流れを誰も乱すことはない。


コトリ、

白い大皿をワゴンに乗せた。


燕尾服の燕尾たる裾がフワリと舞い、それが元ある場所に落ち着くのに合わせて男は靴のかかとを揃え、自分が歩いてきたほうへ向きなおると恭しく礼をした。

「引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。」

鍋を振るい、ソースで繊細な絵を描き、彫刻のように盛り付ける彼らに敬意をもってそう言うと、男は調理場をあとにした。


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mokuji


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