「誰かに命を狙われるようなことしたの?」
「・・・お前には関係ない」
クザンは置いてあったマッチを使い、部屋の蝋燭に明かりを灯した。
「とりあえず、理由が聞きたい」 「嫌だ」 「君のせいで手が片方おじゃんになりかけたんだけど」 「お・・・お前の勝手だろう?」
「教えてくれないとおじさん何しちゃうかわからないよ」
わきわきといやらしく指を動かせば、女は面白いほどに顔を嫌悪の色に染める。
「ひっ! こっちに来るな!けだもの!」
「・・・話してくれるよね?」
「うぐっ・・・」
(面白い)
一筋縄ではいかないあたり、自分の部下とそっくりだ。
女は威嚇する目をそのままに彼に尋ねた。
「そもそも、お前は我のことを知らんだろう?」
「君にそっくりな子なら知ってるけどね」
「話にならぬ」
「じゃあ教えてよ」
「違う」 「何が」 「人にものを尋ねるときの作法を知らぬのか」 「・・・教えていただけますか」
「ふん」
女は部屋にあったたった一つの椅子にふんぞり返った。
「我はこの国のものであり、この国は我のものである」
背もたれにどしりともたれ掛り、面倒くさそうにクザンにそう告げた。
「・・・王族の子だったの?」
「そうじゃ。それにただの王族ではない。我はこの国の王。こうして口を聞いてやるだけでも畏れ多いことを理解しろ」
ふんぞり返るその姿はスズと瓜二つ。 突然「王様だ」と言われてもまったく実感がわかない。それどころか、子供のごっこ遊びのような感覚に陥る。
「そういう冗談言ってるから命狙われてるんじゃない?」
「無礼者!!」
女は椅子から跳ねるように立ち上がるとクザンのすねを思い切り蹴り飛ばした。
「ッたい!」
「嘘だと思うならこの国の誰かに聞くもよかろう。この王が誰かとな」
ハンッと鼻で笑って女は突然悲しい顔をした。
「役立たずのアナスタシア。 きっとそう返してくれるだろう」
自虐気味に彼女はポツリポツリと話し始めた。
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