24:投石絢爛豪華な音楽と、それに見合うどっさり大きなスカートと、それに付き添う黒や白の鈍い反射。 それらが眩い平らな床の上、犇めく。 (だめだ、香水の匂いに鼻が死にそう・・・) 「美しい」華やかな世界にあこがれる者はたくさんいるだろうけれど、これはなんというか・・・戦場のようではないでしょうか。 「ふ・・・うっ・・・鼻が、」 会場の入り口付近でスズはたくさんの布の塊にもみくちゃにされていた。 そんな彼女を横目でうかがいながら、一人涼しい顔をして壁に背を預けているクザンに、スズは顔をしかめる。 「クザ・・・あ」 いつも通り「クザンさん」と呼ぼうとしたが、フリルの海に溺れ、反対方向へと流された。 (あ、) その様子はクザンからも確認できた。 (あらら、どんどん流されて・・・) やれやれ、と壁から背を離した拍子、 次はクザンがフリルの塊に囲まれた。 「あの、もしや海軍大将のクザンさんではありませんか」 「聡明なお顔!」 「クザンさん、一度お会いしたいと思っていたの!」 「わっ。ちょ、ちょっと!ごめん、今お取り込み中」 「あら、どなたかお約束が?」 「どこのどなた?」 クザンに寄ってきたのは、政府の要職についている女性たちである。 「さぞ綺麗な方なのでしょうね」 「うやらましい」 「この後、一曲お手合せを・・・」 あまり会議に参加しないクザンでも見覚えのある顔ぶれ。 (まいったなァ) 涼しげな顔を保ちつつも、内心はスズが心配でたまらない。 「ねえ、」 クザンを取り巻いていた女のひとりが彼の袖を引いた。 その仕草はクザンの気持ちが逆撫でた。 「っ・・・」 触れてきた腕を勢いよく振り退ける。 「いたいっ・・・」 「すまない、えっと、あ。・・・トイレに行きたくて!」 「へ?」 「じゃ!」 人をかき分け、その場から逃げた。 「あら、」 「照れ隠しでしょうか」 「はぁ・・・青年のような心をお持ちなのね。素敵」 取り巻いていた女たちは逃げ去るクザンをポーっと眺めていた。 |