ミレディはその香りのもとである麻酔薬のことを、スズに話した。



「・・・この試作品はただ作ってみただけですわ。ねぇ、スズさん。貴方があの麻酔薬を嗅いだ時、こんなぶどうの匂いがしていましたか?」

「・・・あれは、無臭だと感じました」

「そうですか・・・」

ああ、と残念そうにミレディーはソファーにもたれかかった。


「あ、えと、ごめんなさい・・・」

「いえいえ、スズさんは悪くないですわ。・・・それにしても、そう。無臭ですか。スズさんの鼻をもってしても・・・」

「? なぜ私の鼻が・・・」


スズがキョトン、としているとクザンが口をはさんだ。


「スズちゃんは鼻がいいから」

「む・・・なんだか言われようが犬みたいですね」


「さながら捜査犬だねェ」

「!」


サラッとからかってきたクザンを槍のような鋭い視線で睨みつける。
しかし、効果は全くない。

「じゃあ難しいかもしれませんね・・・」

「「?」」

スズとクザンは揃って首をかしげた。

「わたくし、その麻酔に興味があるんです。科学者として。しかし政府のパーティとなると顔がだせませんので・・・スズさんに麻酔の製造の関係者がその場にいるかいないか調べてきて頂けないかと思いまして・・・」

「政府のパーティ・・・?それに、どうやってですか?」

「そこが問題なのです。わたくしは、本物でも微量にこの試作品と同じ匂いがすると思ったので、この匂いが染みついた人間がいるかどうかで探してもらおうかと思ったのですが・・・本物が無臭となると厳しいですわ」

「ふむふむ。方法は分かりました。だけど、政府のパーティって・・・?」


(あ、そういえば説明してなかった)

ハッとしたクザンだが時すでに遅し。


「聞いていませんか、センゴク元帥から」
「いえ、まったく・・・。クザンさん、なにか御存じですか?」
「ごめん、すっかり忘れてた。スズちゃんにパーティの招待状がきてるよ。あとあれ、ドレス」

そう言って、クザンは先ほどまでもっていた平たい綺麗な箱を指さした。


「そんな大事なことは早く言ってください!!!」

スズは急いで箱のそばに駆け寄った。
 


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mokuji


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