クザンがドレスの箱を持って、自室に帰る途中、きょろきょろとしながらあるくスズにはち合わせた。


「あ、いた!」

「あらら。お久しぶり。遅刻だねー」

「申し訳ありません・・・」

スズは深深と頭を下げた。
頭を下げる途中、クザンの持っている箱が目にはいった。

「それ、なんですか?」

「ん?・・・内緒」

「(・・・)綺麗な箱ですね」

「そう?」

「む。」

愛想もなくサラッと話すクザンに、スズは胸をざわつかせた。
やはり、自分は避けられているのではないだろうか、と。


「すみません。お邪魔しました。」

居づらくなる前に立ち去ろうと、スズはもと来た道のほうへ身体を向けた。
しかし逃げる彼女のコートの襟を、クザンが瞬時に捕まえる。

「ぐえ」

スズは変な音を漏らした。


「なぜ逃げる?」


「(なにさ・・・)・・・逃げてるのはクザンさんのほうじゃないんですか?」


「? 俺がいつ逃げたの?」


「・・・最近、いません。執務室に。」

「サボりだよ」



「私の事、避けていませんか」


彼女の言葉に衝撃を受けたのか、襟をつかんでいたクザンの手が緩んだ。

その隙にスズはそそくさと彼の手の届かない場所に避難した。



「こないだからずっとですよ」


「・・・」


「聞いていますか?」


「・・・そんなこと気にしてたの」


ぽかーんとした口で今にも笑いだしそうな目をしているクザン。
そんなクザンをスズは腹立たしくて睨んだ。

が、クザンにはそれが逆効果となった。


「ぷふ・・・。やだなに可愛いじゃないの。寂しい思いさせてごめんね?」

「ーッ!!!なっそ、あっ!!違いますそんなんじゃありません!!」

「照れない、照れない」

目にもとまらぬ速さで、逃げ離れたスズに近寄るとわしゃわしゃと動物相手にするように彼女の頭を撫でまわした。

「なんだかマイナスなこと話して気分を害してしまったかなーとか思ったのです!べつに寂しくなんてないです!むしろすがすがしく仕事してましたから!!ちょっと大変でしたけれど!!だからそういう・・・ああもう!手を、手を退けてください・・・!」

「スズちゃんなら一人で大丈夫かと思ってたんだけど・・・ぷっ・・・へぇ、そう、今度からは一緒に出かけようか?」

「ッ、ふざけないでくださいぃ!!」

スズの顔は怒りと恥ずかしさで真っ赤に染め上がり、青い瞳は波打つ海のように滲んでいる。

そして、今更ながら動けないように肩を掴まれている事に彼女は気付いた。



(クザンさんに気を使った私が愚かでした!数分前の私のマヌケ!!)


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mokuji


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