23:平たい箱


夢をみた。
鏡うつしの夢をみた。


(・・・ふ、眠い、)

くあぁ、と自重しないあくびをする。

(いつ振りだろう・・・目覚めがいい)

頭の上にある布団の端をぎゅうと首もとにまるめこむ。
ベッドの上には、金色の髪が申し訳程度に生えた、まん丸い布団の饅頭ができた。
もちろん中にはスズが詰まっている。


(あったかい・・・このままベッドにいたいなあ・・・)

ふあ、と布団の中でもあくびをした。

(まあ、でも、とりあえず時間だけでも見なきゃ、)

尺取虫のように時計があるであろう方向に饅頭のまま進む。
そしてちょうどいいところで饅頭から顔をすぽんと出して時計を確認。

(・・・なんだ、まだ3時すぎか)

まだ眠れる、と安堵した頭にすぐさま目からの視覚情報が異議を立てた。

二、三度瞬きをして首をかしげる。

(・・・なぜこんなに明るいんだろう)


「直れー!!」
「!?」

突然窓の外から大きな声と革靴のぶつかる音がした。
・・・紛れもない訓練兵の声と靴の音。

「昼訓練!?」

がばっと起き上がり、ベランダに飛び付いた。
眼下できびきびと動く海兵たち。
どう見間違えても深夜3時の光景ではなかった。


「ついに壊れたか」

恨めしそうにベッド脇の時計の文字盤を見た。

「どうするのよ。クザンさんに何か言われちゃうじゃない」

はあ、

謝罪の言葉など発せられるはずのない時計に何を言ってもただの独り言だ。
スズはベランダから離れ、いつもより少し手早く準備をした。
 


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mokuji


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