(コビメッポにも話してないこと、延々と話してしまった・・・あの人のことだから、幻滅なんてしないだろうけど)


スズ自身、話してすっきりした。
がりがりと固い煎餅を噛みしめながら、スズの頭はいろんな場面のいろんなクザンを映し出す。


(・・・クザンさんはいい人だ)


そんな彼の「好き」だと言う。
けれどその気持ちを受け止めるには自分という器が小さすぎる。

(それに理解も乏しい・・・)


ただでも容量不足のスズの頭をずっと独占するクザンの台詞。そしてどうすればいいのか、考えるほどにそれらは迷宮入りしてしまう。

スズは頭の中で、問題を簡単に書き換えた。

(結局、こういうことだよね「私はどうしたい?」って)

自分はどうしたい?
スズは改めて自分に投げかける。


(一緒にいたいのは・・・確かなんだけれど)

居なくなったら、と考えると胸の痛みととみに大きな悲しみが顔をのぞかせる。


ミレディーの言葉が蘇る。
『”ここ”が痛んだことはないのかしら?』


(痛いです・・・今は嫉妬してるんじゃないのに・・・)


この痛みもどこかへ捨て去ることができるのだろうか、この痛みはこの身体の異常な治癒力でどうにかならないのか。

スズの思考はうろうろとあちらへこちらへと歩きまわる。

(分からない、分からない・・・)

いつか理解できるのか。
霧を抱くような不確かな感覚だけ、スズはぼんやりと感じた。


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mokuji


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