一方、スズに遅れて目を覚ましたクザンは何も予定のない非番をこのままにするのも癪なので町に出ていた。

(起きたら案の定逃げちゃってたなァ)

珍しくぐっすりと眠っていたクザンは、起きたらスズが紅茶を入れていて「おはよう」と言ってくれることを夢にみた。
しかし現実はそうではなく、温かい紅茶の代わりにブランケットが寝起きの彼を迎えた。
お前はお呼びじゃないんだけれど。
昼を越えた太陽の光に目がくらみそうになりながら、クザンは重い身体を持ちあげて外にでた。


(腹減ったなァ・・・どっか入るか)

賑やかな広場を通り抜け、落ち着いたレストラン街へと足を向けたころ、クザンの目に見覚えのある横顔が飛び込んだ。


「・・・スズちゃん?」


離れているせいもあるのだろうが、スズはクザンのことなど全く気付かず、前方すこし上へと注視している。

彼女がそうしているように、クザンも彼女から目が離せなかった。


 『ねぇ知ってる?おじさん』


目に見えるスズを邪魔するように、記憶が目にぼやけて映る。


 『ぜったい死なない人間はいるんだよ』


いつだったか、言われたその言葉。
膝を抱いて真剣に前を向くスズ。

彼女そっくりだった子が言った言葉。


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mokuji


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