かちん! かちゃん!

「!」

何かがリズム良く当たる音がして、スズははっとした。

(なにか、これ聞いたことあるような・・・)

さっき、シャッターを切るの音と間違えて走り込んだ広場から賑やかな声とともに耳に届くその音は、金属音ではなかった。
もっと柔らかく暖かみのある、けれどもよく響く音。

「裁判所の木槌みたいな」

そう、あの滑らかな木の道具が打ち付けられる音そのままだ。

「なんの音?」

聞き覚えのある音と一緒に聞こえる声だけを依り好んで耳を傾けた。



「さぁ、いらっしゃい!早くこないと始まっちゃうよー!」

「まって! ほら、早くきなさいよ」

「だってママにー」

「あとで謝ればいいわ。はやく!」



「あ・・・」

木の棒をかちかちと叩いている男性の周りに、子供があつまっていた。
目深に帽子をかぶった男性はそばに背の高い机を携えている。のっぽなその机の上には何かのっているようだが、スズの場所からでは良く見えない。

けれどスズの記憶に一片、同じものがあった。

「紙芝居かあ」

懐かしい気持ちが湧いてくる。

(私、でも紙芝居とか見たことあったかなあ・・・)

うーん、と首をかしげつつ集まる子供の群れに混じっていった。
近づくにつれ、ざわつく高い声に身体を包まれる。



「さぁ、みんな集まったかな?紙芝居のはじまり、はじまりー!」


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mokuji


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