『クザンさんの・・・馬鹿野郎!』

耳にぺったり張りついてとれない言葉。
その言葉に苛まれて、クザンは昨夜から寝つけずにいた。

外はゆっくりと明るくなろうとしている。


(スズちゃんが『馬鹿野郎』なんて言葉、使うとはねェ)

彼女がそんな言葉を使うところを、彼は見たことがなかった。


(まァ・・・俺が全部悪いわけだけど)



『下着姿の写真を撮られていたようです』

昼間、執務室に尋ねてきた男の話を聞いたスズはクザンにそう言った。
それを聞いた瞬間、その男を捕まえて知っていることをすべて話させて、犯人を捕まえてやろうかと彼は思った。
けれどその前に散々大丈夫だと言われていたため、行動を起こすのがはばかられたのだ。


(なんであそこまで一人で解決しようとするのかね)


(見てるほうが、苦しい)

ただ、押しつぶされそうな儚さを纏った彼女は、息を飲むほど素敵だと思う。


(そんな馬鹿なこと考えてるから馬鹿なことしかできねェんだ)




「今日、どうしようか」

本来なら、スズと一緒に出かける予定だった。
けれど昨日の今日だ。おそらくスズはついてこない。


「せっかく気分転換させてあげるつもりだったんだけど・・・」


クザンはベッドから起きあがると、あてもなく部屋をうろつく。
ソファ横の机に、昨日スズが置いていってそのままのティーカップが置いてあり、ふと目についた。


(・・・早まったことしちゃったねェ)


あと数時間後には必ず顔を合わせることになるであろうスズに何と言ったものかと、クザンは考えた。


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mokuji


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