19:知りたいうっすらと朝もやに日が差しはじめる時間帯。 スズは目を覚ました。 (・・・う、夢にも出てきた) 起きた頭に残る、夢の痕跡。 クザンの顔がゆっくり近づいて、その後・・・。 昨夜、スズはクザンにキスをされた。 一般的にはそれは大したものではなくて、触れるだけの軽いキス。 だけれど、胸がやけるように苦いキス。 (まだ痛む・・・) ひりひりとする胸を押さえた。 ぱしんっ 乾いた音が薄暗い部屋に響く。 「あいたっ」 スズがクザンの頬に平手を打ったのだ。 「・・・」 「・・・」 「クザンさんの・・・馬鹿野郎!」 スズはクザンの腕の力が緩んだのを見計らって逃げるように執務室へ駆け込み、扉を閉めた。 後の事は断片的にしか覚えていない。 掛け布団をかぶって、横にクッションが見えて。おそらくその後すぐに寝たのだと思う。 寝て起きてみると不思議なもので、昨夜のことはどこか他人事のように見えてしまう。 (むしろあれは夢なのかな・・・) でも確かにクザンの頬を叩いた感触は覚えている。 「・・・酷いことしたかな」 もしくは、酷いことをされてしまったのだろうか。 |