青雉が寝ている間に、マシューたち駐屯所の海兵たちは黒服たちの連行と船の捜査、掃除を終えスズのところへと報告にきた。

そのころにはスズもだいぶ体を動かせるようになっており、いつも通りに話すことができた。


「マシューさん、御苦労さまです。」

「青雉殿は寝ておられるのですね」

マシューは青雉を気遣って声を小さくして話した。


「マシューさん、私と大将青雉はこのまま海軍本部まで戻りたいのですがよろしいでしょうか?」

「そんな・・・今日はぜひ駐屯所で休養なさってください。大変お疲れでしょう?」

「いえ、大丈夫です。
私ももう動けますし、大将青雉が目を覚ましたらすぐ本部帰りたいのです。」

「そうですか・・・そうですよね、本部への報告もありますからね。わかりました。また今度、仕事など関係なしに遊びにきてくださいね。お待ちしておりますよ」

「はい、ありがとうございます!では、犯人たちの護送等、お願いしますね」

「かしこまりました。では!」

敬礼をするとマシューは海岸に停泊させてある軍艦のほうへ向きなおった。

「あ、マシューさん」

そのマシューをスズが呼びとめる。

「はい、なんでしょうか?」

「あの・・・オールバックの男に言付け願えますか?」

「わかりました」


「家族の失態を拭うのは、家族の仕事なんだ、と」


「・・・はい、確かに」

憐れむような悲しむような顔をして、マシューはまた軍艦へと向きなおった。

そしてそのまま振りむくことなく去って行った。




「家族、ねぇ・・・」

ふともものほうからふいに声がした。

「クザンさん、起きてたんですか」

スズは顔をしたに向けると、親指でアイマスクを持ち上げている青雉と目があった。

「マシューさんの足音でね」

「そうですか」

「あんなでも家族だって言いきるの?」

「私とサロメが家族として生活した日々は嘘ではないんです。
それがどんなものであれ、私にはとても愛しいし、家族の生き残りが1人でも増えて嬉しいんです。わがままですよねぇ私。」

そのまま彼が獄中生活でも嬉しいなんて、とスズは笑った。

その笑顔が痛々しくて、やめさせたくなって、青雉は立ち上がって彼女の手をとった。


「さて、帰ろうか」

その意図を察してか、笑うのをやめてスズも立ち上がった。

「はい、仕事はまだまだありますからね」

「・・・やっぱりこのままこの島に」「駄目です。」




青雉が自転車にまたがっり、スズはその後ろに乗る。


「サロメって女性の名前だよね」
「そういえばそうですね」


背の高いパーマの男と血だらけボロボロの女。

二人を乗せた自転車はそのまま海へと繰り出すと、沈むことのないまま、まっすぐまっすぐ海軍本部へと進んでいった。


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mokuji


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