「・・・?」
スズの混乱は加速する。
「クザンさん・・・?」
「どう?ちょっとでも写真のこととか頭から吹っ飛んだ?」
「・・・は、はい。 あ、」
頬に当てられていた手が離れる。
恥ずかしい、早く離してほしいと思っていたのに。 さっきとは逆に、さっと離れた手がなんだか寂しかった。
「こんな馬鹿な方法しか最初おもいつかなくってね」
クザンは目を細めて笑った。 どうしてか、それを見ていると哀しさが胸を支配する。
スズはとっくに飲み終えていたカップを机に置いた。
ぽたり、
手に何かが落ちる。 ひんやりとするそれは、スズの目から降った涙だった。
一粒落ちてしまえば、あとはもう、ひっきりなしに。
「・・・っ」
ぽたりぽたりと服を染める涙。
「わ、わ、すみません・・・びっくりして」
「・・・」
「泣くことなんて何も、何もない、のに」
目に焼きついた哀しい笑顔から、写真の話など最近あったことが感情の脈にどっと流れ込んでくる。 それが痛いからなのか、涙がとまらない。
「よいしょ」
「!!」
クザンがスズの脇に腕を通し彼女を持ち上げる。
「なっ・・・重いです、から!降ろしてっ」
どすん
クザンがソファに座り、スズはその膝に乗っけられる。 どういうことなのか文句を言おうにも、恥ずかしさでクザンの顔を見ることができない。
膝に乗っけられている羞恥心は流れる涙の量を増やす。
「すいません、服が」
クザンのズボンの色が濡れて変わってしまっている。
「いいよ。好きなだけ泣いちゃいなさい」
「う・・・、降りていいですか」
「ダメ」
降ろすどころか、頭をわしわしと撫でられる。
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mokuji |