「サクラ少将、さっき写真売りに会って新しい写真を見せられたんですが・・・その・・・」
男はぐっと言い淀んだ。
けれど言わなければ。これを言いに自分は彼女の元へきたのだ。 言いにくいその言葉を喉から口へ、口から舌へと運んで行く。
「下着姿の、写真が。ありました・・・」
「!!」
「ほんの少ししか見えてないのですが、見た時は俺、びっくりして・・・」
「そんなの撮られて・・・っ」
「はい、残念ですが・・・。自分はそれを言いにきたんです」
男は立ち上がり、スズに真っすぐに向き合った。
「気を付けてください、サクラ少将。どこから見られているかわかりません。狙われているんです。だから・・・だから、俺」
「・・・、ありがとう」
「?」
「知らせに来てくれて、ありがとう!」
ぺこり、とスズは頭を下げた。 男は驚きで目を見開いた。
(この人・・・こんな・・・)
「それだけ分かれば大丈夫。なんとでもなる」
(こんな泣きそうに笑う人だっけ・・・)
男が見てきたどんなスズの笑顔より、それはとても悲しくて。 写真で眺めていた、男が眺めていたいと思った顔は、こんな顔じゃなかったのに。
思わず息をするのも忘れた。 底知れぬ罪悪感が身体中をぞわぞわと浸食していく。
「ほんとに、すみません・・・。」
「? 謝ることなんてないですよ。写真撮って売りさばいてるやつが問題なだけです」
正拳突きの動作をするスズ。
(なんだ、勘違いか・・・?)
あの泣きそうな顔は見間違えかと思うほど、いつもとなんら変わらないスズにもどっていた。
(よかった、平気そうで)
「じゃあ、俺はこれで失礼します・・・。くれぐれも注意してくださいね、サクラ少将。俺も売ってる奴見つけたら止めますから」
「はい。お願いします!」
「では、」
スズは去っていく男の背中にひらひらと手を振った。
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mokuji |